親の口座からお金が下ろせない時|
成年後見制度と施設費用の支払い方

サイト管理人
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祖父母の施設入居・父親の入院と緩和ケアを経験。実体験をもとに情報をお届けします。
施設の入居が決まって、ほっとしたのも束の間。「支払いは、どの口座から?」という話になる。
親の年金が入っている口座は、親の名義です。通帳もカードも、どこにあるか分からない。窓口に行ってみたら、「ご本人様がお越しにならないと」と言われる。あるいは、施設費の引き落としが止まってしまって、事務の方から連絡が来る。
ここで初めて「成年後見制度」という言葉を聞いた——そういうご家族は、決して少なくありません。銀行の方から言われて、あるいはケアマネジャーさんから聞いて、慌ててインターネットで調べ始める。読んでも、難しい言葉ばかりで頭に入ってこない。
この記事は、親の施設費や生活費を、実質的に子どもが管理し始めている(あるいは、始めざるを得ない)方に向けて書いています。法律の知識がある前提では書きません。
そして先に、この記事の立場を書いておきます。ここでは「こうすれば必ずうまくいく」という書き方をしません。制度の内容は変わりますし、実際の運用は地域や金融機関、そして一人ひとりの事情によって違うからです。この記事は、専門家に相談する前に、話の全体像をつかむためのものです。
⚠️ はじめにお読みください
この記事を書いているのは、法律の専門家ではありません。介護を経験した一人の家族が、裁判所・法務省・厚生労働省などが公表している情報をもとに整理したものです(2026年8月時点)。

ここに書いたことは、法的な助言ではありません。「この方法なら通ります」「こうするのが得です」といった判断は、いっさいしていません。そう読める部分があれば、それは書き方の問題です。実際の手続きや判断は、必ず家庭裁判所、弁護士・司法書士などの専門職にご確認ください。

金額・期間・必要な書類は、変わりうるものです。この記事では目安として紹介しますが、裁判所や自治体、金融機関によって、また時期によって異なります。必ず、ご自身の手続き先に直接ご確認ください。

相続税や贈与税など、税金に関する判断はしていません。節税や相続対策の方法も書きません。税に関することは、必ず税理士にご相談ください。

特定の家庭の事例は、実在のものも、たとえ話として作ったものも、いっさい書いていません。「Aさん(70代)の場合は……」といった架空のケースは、この記事には一度も出てきません。

特定の民間サービスや事業者をおすすめすることもしません。

① なぜ「親のお金」が動かせなくなるのか

まず、いちばん根っこにある考え方から書きます。ここが分かると、そのあとの話が「なぜそうなるのか」として理解できます。

預金は、名義人本人のものです。そして、銀行と預金の契約を結んでいるのも、本人です。だから原則として、そのお金を動かせるのは本人だけ——これが出発点になります。

「家族なんだから、当然できるだろう」と思われるかもしれません。けれど、法律の考え方の上では「家族だから当然できる」とはなっていません。親子であっても、夫婦であっても、名義が違えば別の人の財産です。

💡 「事実上できてしまうこと」と「権利があること」は違います
通帳とキャッシュカードと暗証番号がそろっていれば、ATMでお金を下ろすことは、事実上できてしまいます。実際、多くのご家庭がその形で親の生活費や施設費をまわしています。

でも、それは「操作ができる」ということであって、「そうする権利がある」という意味ではありません。

この違いは、ふだんは表に出てきません。表に出てくるのは、たいてい次の3つの場面です。

  • 窓口での手続きが必要になったとき——大きな金額の引き出し、定期預金の解約、住所変更、口座の解約など
  • 金融機関が、本人の状況を知ったとき
  • 相続が起きて、きょうだいの間でお金の話になったとき
この記事の後半(⑬)で、この3つ目に備えるための、現実的な方法を書きます。

いわゆる「口座が凍結される」という話

親の認知症が金融機関に伝わると、口座の取引が制限されることがある——そう聞いたことがあるかもしれません。

まず言葉の整理をします。「口座凍結」というのは法律で決まった用語ではなく、通称として使われている言い方です。そして、どこまで制限されるか、何ができなくなるかは、金融機関によっても、状況によっても違います。「認知症と分かったら、その日から一切動かせなくなる」といった単純な話ではありません。

ただ、制限がかかることがあるのは事実とされています。これは意地悪でそうしているのではなく、本人の財産を、本人以外の誰かに勝手に使われないように守るためだと説明されています。

🏦 全国銀行協会が示している「考え方」
2021年2月18日に、一般社団法人 全国銀行協会が「金融取引の代理等に関する考え方」という文書を公表しています。銀行業界の団体が、会員の銀行の参考になるようにまとめたものです。

そこで示されている基本的な考え方として、次のようなことが紹介されています。

  • 認知・判断能力が低下したご本人との取引では、ご本人の財産保護の観点から、親族等に成年後見制度等の利用を促すのが基本とされています
  • ただし、ご本人の医療費の支払いなど、ご本人の利益に適合することが明らかな場合には、代理権のない親族による払い出しに応じることもありうる、という考え方が示されています
  • その際、銀行は診断書や、複数の行員による面談などで状況を確認するとされています
そして、この文書には重要な注記があります。「会員各行に一律の対応を求めるものではなく、個別の状況等により、この考え方と異なる対応が取られるケースもありうる」という趣旨のことが書かれています。

つまり——「全国銀行協会がこう言っているから、どの銀行でも必ずこうしてもらえる」とは限りません。実際の対応は、その金融機関に確認するしかありません。
⚠️ ここで、慌てないでください
「口座が凍結されるかもしれない」と聞くと、「その前に、まとめて下ろしておいたほうがいいのでは」と考えてしまうかもしれません。

この記事では、その方法をおすすめしません。ご本人のためではない目的で大きな金額を動かすことは、あとで、きょうだいや他の相続人との間で、深刻な問題になることがあります。ご本人の財産を守る話が、家族の関係を壊す話になってしまいます。

不安なときほど、一人で動かず、先に相談してください。相談先は、この記事の最後にまとめています。

施設費の引き落としが止まったとき

実際にご家族が困るのは、たいてい「支払いが止まった」という具体的な場面です。

施設費の口座引き落としができなくなった。公共料金が未納になった。カードが使えなくなった。——こういうとき、まず施設の相談員(生活相談員)やケアマネジャーに、状況をそのまま伝えてください。

「お金のことを言うと、追い出されるのでは」と心配される方がいます。けれど、支払いが滞る事情は、施設側にとってもよくある相談です。黙って未納が続くほうが、はるかに事態がこじれます。「手続き上の問題で、一時的に支払いができない状態です」と伝えて、いつまでに、どう解決する見込みかを共有してください。支払い方法を変えるなど、対応の相談ができる場合があります。

そもそも施設の費用がどのくらいかかるのかを整理しておきたい方は、老人ホームの費用は月いくら?相場と内訳を家族目線で解説もあわせて読んでみてください。金額の見通しが立つと、どの口座からどう払うかの話も進めやすくなります。

また、この記事は「お金の管理」の話ですが、その手前で、親の様子の変化そのものに戸惑っている方もいらっしゃると思います。認知症の症状への向き合い方は、認知症の症状への向き合い方|「本人にとって理由のある行動」として考えるに別途まとめています。

② まず確認しておきたいこと

成年後見制度の話に入る前に、やっておくと必ず役に立つことがあります。それは、親のお金まわりの「地図」を作ることです。

後見の申立てをするにしても、しないにしても、「何が、どこに、いくらあるのか」が分からないままでは、どんな方法も選べません。そして、この作業は早いほど楽です。

確認しておきたいもの 具体的に見ておきたいこと
預貯金の口座 どの金融機関の、どの支店か。通帳・キャッシュカード・届出印がどこにあるか。ネット専業の銀行や、ネットバンキングだけの口座は、通帳がないので見つかりにくいと言われます
年金の振込先 どの口座に、いくら、いつ入っているか。年金は原則としてご本人名義の口座に振り込まれます。年金額の通知(はがき等)が届いていれば、そこで確認できます
引き落とし・自動振替 家賃、公共料金、電話、新聞、施設費、保険料、クレジットカード、定期購入やサブスクリプションなど。本人が使わなくなったサービスが引き落とされ続けていることがあります
保険 生命保険、医療保険、個人年金など。証券がどこにあるか、保険会社はどこか。入院や介護状態で受け取れるものがないかは、保険会社に確認できます
不動産 持ち家、土地、固定資産税の納税通知書。「実家を売って施設費に充てる」という話が出たときに、必ず必要になります
証券・投資信託など 取引報告書が郵送されていないか。これらは、後見や信託の話になったときに扱いが複雑になりやすい部分です
借入・ローン 住宅ローン、カードローン、家族や知人からの借入。プラスの財産だけでなく、マイナスも把握が必要です
貸金庫・保管場所 金融機関の貸金庫、仏壇、タンス、押し入れ。権利証や実印が思わぬ場所にあることがあります
🌿 できれば、ご本人と一緒に
いちばん望ましいのは、ご本人がまだご自分で判断できるうちに、ご本人と一緒に確認することです。

本人抜きで通帳や書類を探し回るのは、あとで「勝手に見られた」という気持ちを残すことがあります。また、きょうだいがいる場合には、「一人で家探しをしていた」と受け取られる原因にもなります。

切り出し方の例としてよく語られるもの
  • 「入院したときに困るから、保険だけ場所を教えておいて」
  • 「引き落としの見直しをしたいから、通帳を一緒に見せて」
  • 「自分もそろそろ整理しようと思って。お父さんはどうしてる?」——自分の話から入る形
財産の額を聞き出す話にしないほうが、話が続きやすいと言われます。「いくら持っているか」ではなく、「困ったときに、どこを見ればいいか」を共有する話です。

暗証番号を家族が使うことについて

ここは、正直に書きます。多くのご家庭が、実際には、親のキャッシュカードと暗証番号を使って生活費や施設費を下ろしています。

そして、この記事は、そのことを責めません。ほかに方法がないまま日々の支払いが来る、という状況は、現実に存在します。制度を整えるには時間がかかりますが、施設費の請求は毎月来ます。

そのうえで、事実として知っておいていただきたいことを、2つだけ書きます。

⚠️ 知っておいていただきたい2つのこと
1. カードの規約上、暗証番号やカードを他人に渡すことは、通常は認められていません
多くの金融機関のカード規約では、カードや暗証番号を他人に貸したり教えたりしないことが定められているとされます。家族であっても「他人」に当たるという考え方です。そのため、万一トラブル(不正利用など)が起きたときに、補償の対象にならない可能性があると説明されることがあります。

2. 問題になりやすいのは、金融機関より「家族の間」です
実務上、いちばん深刻になりやすいのは、相続が起きたあとに、他の相続人から「あのお金は何に使ったのか」と問われる場面だと言われます。使い道が正しくても、説明できる材料がないと、疑いだけが残ります。

だからこの記事では、「やめましょう」でも「大丈夫です」でもなく——「記録を残してください」とお伝えします。具体的な残し方は、⑬に書きました。

なお、この記事は「見つからなければ問題ない」という考え方には立ちません。そうではなく、「あとから、誰に対しても説明できる状態にしておく」ことが、結果的にご自身を守り、ご家族の関係を守ります。それは、後ろめたさをなくすための作業でもあります。

また、支払いの負担そのものを軽くできる制度がないかも、同時に見ておく価値があります。介護費用を軽くする制度まとめ|高額介護サービス費・負担限度額認定証などの公的制度に、公的な軽減のしくみを整理しています。後見の手続きより先に、こちらで解決する部分があるかもしれません。

③ 成年後見制度とは、どういうものか

ここから、制度そのものの話に入ります。言葉が硬いので、ひとつずつ、かみ砕いていきます。

成年後見制度は、判断能力が十分でない方について、その方に代わって(あるいは、その方を助けて)契約や財産管理を行う人を決めておく仕組みとして説明されています。

この制度には、大きく分けて2つの入り口があります。

2つの入り口 どういうものか
法定後見(ほうてい こうけん) 判断能力が低下した「あと」から使う仕組みです。家庭裁判所に申立てをして、家庭裁判所が支援する人(成年後見人等)を選任します。法務省の説明では、その権限も基本的に法律で定められているとされています。

この記事を読んでいる多くの方に関係するのは、こちらです
任意後見(にんい こうけん) 判断能力があるうちに、自分で決めておく仕組みです。法務省の説明では、本人が任意後見人となる方やその権限を自分で決めることができるとされています。

詳しくは⑨に書きます

法定後見の3つの類型

法定後見には、ご本人の判断能力の程度に応じて、3つの類型があります。裁判所の説明では、次のように整理されています。

📘 後見・保佐・補助(2026年8月時点で実際に運用されている制度)
  • 後見(こうけん)——判断能力が欠けているのが通常の状態の方が対象とされています。選任されるのは「成年後見人」です
  • 保佐(ほさ)——判断能力が著しく不十分な方が対象とされています。選任されるのは「保佐人」です
  • 補助(ほじょ)——判断能力が不十分な方が対象とされています。選任されるのは「補助人」です
3つの違いは、支援する人がどこまでの権限を持つかにも関わります。おおまかに言えば、後見がもっとも広く、補助がもっとも限定的とされています。

どの類型になるかは、ご家族が選ぶものではありません。医師の診断書などの資料をもとに、家庭裁判所が判断します。
⚠️ 大事なお知らせ:この3類型は、将来的に見直されることが決まっています
2026年6月に成立した民法等の改正により、この「後見・保佐・補助」という3つの類型は、将来的に見直されることが決まっています。

ただし、その改正は、2026年8月時点ではまだ施行されていません(つまり、まだ効力が生じていません)。いま実際に運用されているのは、上に書いた3類型のしくみです。いま申立てをする場合は、この現在のしくみで進むことになります。

改正の内容と、施行の時期については、⑧で詳しく書きます。先に知っておきたい方は、そちらを読んでから戻ってきてください。

後見人は「お金の管理」だけの人ではありません

成年後見というと、財産の管理のイメージが強いと思います。実際、ご家族が困って調べ始めるきっかけも、たいていお金の話です。

けれど、一般的な説明では、後見人等の仕事は大きく2つあるとされています。

📗 財産管理と、身上保護
  • 財産管理——預貯金の管理、収入と支出の管理、必要な支払い、不動産の管理など
  • 身上保護(しんじょう ほご)——ご本人の生活や療養看護に関する法律行為のことです。介護サービスの契約、施設の入居契約、医療機関との契約手続きなどが挙げられます
つまり、「施設の入居契約を、本人に代わって結べる人がいない」という場面でも、成年後見の話が出てきます。
⚠️ よくある誤解:後見人は「身元保証人」ではありません
ここは、混同されやすいところです。

身上保護は「契約などの法律行為」を担うものであり、一般に、身元保証人や身元引受人になることとは別のことだと説明されています。また、実際の介護をする(食事や排せつの世話をする)役割でもありません。

「後見人を立てれば、施設の保証人問題も解決する」と考えていると、話が食い違うことがあります。身元保証人については、身元保証人がいないとき|施設に入れないと言われたらに別途まとめています。

また、医療行為に同意する権限は後見人にはないと説明されることが一般的です。この点も、施設や病院との話で出てくることがあります。具体的な扱いは、必ず専門職や施設に確認してください。

④ 法定後見の申立て——誰が、どこに、何を出すのか

ここでは、実際に手続きを進めるとしたら、どういう流れになるのかを書きます。

ただし、繰り返しになりますが、この記事は手続きの説明書ではありません。書類の種類や数、様式、費用は、裁判所によっても、事案によっても異なります。実際に進めるときは、必ず管轄の家庭裁判所か、弁護士・司法書士に確認してください。

どこに出すのか

申立て先は、ご本人の住所地を管轄する家庭裁判所とされています。申立てをする人(子など)の住所地ではありません。親が遠方の施設にいる場合、どこが管轄になるのかは、事前に確認しておくと安心です。

裁判所のウェブサイトには「後見ポータルサイト」という案内があり、各家庭裁判所の書式や手引きが公開されています。また、多くの家庭裁判所には手続案内の窓口があります。まずそこで聞く、というのは十分に現実的な進め方です。

誰が申立てできるのか

👥 申立てができる人として挙げられているもの
裁判所の説明では、後見開始の申立てをすることができる人として、次のような立場の方が挙げられています。

  • 本人
  • 配偶者
  • 四親等内の親族——子、孫、親、きょうだい、おい・めい、いとこなどが含まれるとされます
  • 未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人
  • 検察官
  • (任意後見契約が登記されている場合)任意後見受任者、任意後見人、任意後見監督人
これに加えて、市区町村長が申立てをする「市町村長申立て」という仕組みがあります。身寄りがない方や、親族が申立てをすることが難しい方について用いられるとされています。この仕組みが使えるかどうかは、お住まいの市区町村の窓口や地域包括支援センターにご相談ください。

どんな書類がいるのか

裁判所が「標準的な申立添付書類」として挙げているものには、次のようなものがあります。あくまで標準的なものであり、これで全部という意味ではありません。

書類 どういうものか
申立書 家庭裁判所の書式があります。申立ての事情、本人の状況、財産や収支の内容などを記載します
本人の戸籍謄本・住民票 市区町村で取得します
後見人候補者の住民票 候補者を立てる場合に必要とされます
診断書(成年後見制度用) ご本人の判断能力について、医師に書いてもらう書類です。裁判所が用意している専用の書式があります。これがなければ手続きが始まらない、と言ってよいほど重要な書類です
本人情報シート ケアマネジャーやケースワーカーなど、日頃からご本人を支援している福祉関係者に記載してもらう書面です。裁判所の説明では、医師が診断書を作成する際の補助資料として活用するとともに、家庭裁判所の審理のために提出する書類、とされています
健康状態に関する資料 介護保険の認定に関する書類、障害者手帳など
登記されていないことの証明書 すでに後見等が始まっていないことを証明する書類です。法務局で取得するとされています
財産に関する資料 預貯金通帳の写し、不動産の登記事項証明書、保険証券の写しなど
収支に関する資料 年金額の通知、施設費の請求書、納税通知書など
💡 「本人情報シート」で、ケアマネジャーが助けになります
書類の中で、ご家族が意外に感じるのが「本人情報シート」かもしれません。

これは、ふだんご本人を見ている福祉の専門職が、生活の状況を書いてくれるものです。医師は診察室でのご本人しか見ていませんが、ケアマネジャーは日常のご本人を知っています。その情報が、診断や審理の役に立つ、という仕組みです。

つまり、後見の手続きを考え始めた段階で、担当のケアマネジャーに相談する意味があります。「後見の申立てを考えているのですが」と伝えれば、シートの作成について案内してもらえることがあります。

まだケアマネジャーがついていない場合は、地域包括支援センターが最初の相談先になります。

どのくらい時間がかかるのか

裁判所は、「手続には時間がかかります。申立てをされてから審判まではおおむね1か月から2か月程度かかります」という趣旨の案内をしています。そして、鑑定を行う場合には、さらに鑑定を実施する期間が必要になるとされています。

ここに、書類をそろえる期間が加わります。診断書を医師に書いてもらう、戸籍を取り寄せる、通帳をコピーする——これらに数週間かかることは珍しくありません。

⚠️ だから「困ってから」だと、間に合わないことがあります
施設費の支払いが今月止まっている、という状況で申立てをしても、制度が動き出すまでには時間がかかります。

だからこそ、目の前の支払いをどうするかは、後見の手続きとは別に考える必要があります。施設の相談員に事情を伝える、支払い方法を相談する、公的な軽減制度を確認する——そちらを同時に進めてください。

費用の支払いそのものが難しい場合の対処は、老人ホームの費用が払えない場合の対処法【軽減制度・特養・生活保護】にまとめています。

なお、期間の見込みは事案によって変わります。実際の見通しは、申立て先の家庭裁判所にご確認ください。

鑑定について

裁判所の説明では、「本人の精神の状況について鑑定をしなければならない場合があります」とされ、その場合には申立人に鑑定の費用を負担してもらうことがある、と案内されています。

鑑定は、必ず行われるものではありません。家庭裁判所が必要と判断した場合に実施されるとされています。実施されるかどうか、費用がいくらになるかは、事案によります。必ず家庭裁判所にご確認ください。

自分でやるか、専門家に頼むか

申立ては、ご家族が自分で行うこともできますし、弁護士や司法書士に依頼することもできます。

どちらが良いかは、この記事では判断できません。財産の内容が単純か複雑か、親族の間で意見が一致しているか、書類を集める時間が取れるか——そういった事情によって変わります。

🌿 費用が心配なときの相談先
  • 家庭裁判所の手続案内——手続きの進め方について案内を受けられます。ただし、法律相談(どうするのが良いかの助言)はできない、とされているのが一般的です
  • 法テラス(日本司法支援センター)——国が設立した法的トラブル解決のための総合案内所です。収入等の条件を満たす場合に、無料の法律相談や、弁護士・司法書士費用の立替えを行う制度(民事法律扶助)があるとされています。条件や内容は変わることがあるので、法テラスに直接ご確認ください
  • 市区町村の無料法律相談——自治体が定期的に開催していることがあります
  • 各地の弁護士会・司法書士会の相談窓口
  • 地域包括支援センター、社会福祉協議会——どこに相談すればよいか分からない段階での、最初の入り口として使えます
相談窓口の全体像は、介護の相談はどこにすればいい?無料で使える相談窓口まとめにまとめています。

⑤ 後見人には、誰がなるのか

ここは、ご家族にとって、いちばん誤解が多いところかもしれません。

「申立てをするのは自分だから、後見人も自分がなるのだろう」——そう思って手続きを始める方がいます。けれど、そうとは限りません。

⚠️ 決めるのは、家庭裁判所です
裁判所は、「申立書に候補者として記載された方が必ず選任されるわけではありません」という趣旨のことを、はっきりと案内しています。

つまり、「長男を後見人にしたい」と書いても、家庭裁判所が別の判断をすることがあります。弁護士や司法書士などの専門職が選任されることもある、と説明されています。

ここを知らずに申立てをして、あとで驚かれるご家族がいます。この記事では、先にお伝えしておきます。

実際には、どうなっているのか

最高裁判所事務総局家庭局が毎年公表している「成年後見関係事件の概況」という統計資料があります。そのうち令和7年(2025年)分の資料では、成年後見人等とご本人との関係について、次のような傾向が示されています。

📊 公表されている統計から(令和7年)
  • 親族が選任されたもの……約7,000件
  • 親族以外が選任されたもの……約35,700件
つまり、選任される後見人等の多くは、親族以外の方という状況が続いています。

親族以外の内訳としては、司法書士、弁護士、社会福祉士が多く、そのほかに市民後見人(研修を受けた一般の市民が担うもの)なども含まれるとされています。

数値は年によって変わります。最新の状況は、裁判所が公表している資料をご確認ください。

この数字を、脅しとして受け取らないでください。「家族は絶対になれない」という意味ではありません。実際に、毎年数千件は親族が選任されています。

ただ、「家族がなるのが当たり前」ではないということは、知っておいたほうがよいと思います。

専門職が選任されやすいと言われる場合

どういう場合に専門職が選任されるかは、家庭裁判所が個別の事情をみて判断するものであり、この記事で「こういう場合はこうなる」と断定することはできません。

そのうえで、一般に説明されている傾向として、次のようなことが挙げられます。

📋 一般に語られている傾向
  • 管理する財産の額が大きい場合や、内容が複雑な場合
  • 親族の間で、意見が一致していない場合——たとえば、きょうだいの一部が申立てや後見人の人選に反対しているようなとき
  • ご本人と、後見人候補者との間で利益が対立する可能性がある場合——たとえば、同じ相続に関わる立場にあるようなとき
  • 不動産の売却など、専門的な判断を要する事務が見込まれる場合
  • 候補者となる親族が、遠方に住んでいる、高齢である、健康上の事情があるなど、事務の遂行に不安がある場合
いずれも「必ずそうなる」という話ではありません。判断するのは家庭裁判所です。

家族が後見人になった場合も、仕事があります

親族が選任された場合でも、「これで自由にお金を使える」わけではありません。ここも、大切なところです。

一般的な説明では、後見人には家庭裁判所への報告の義務があるとされています。財産の目録を作る、収支の状況をまとめる、定期的に報告する——そういった事務が継続的に発生します。

また、後見監督人が選任されることがあります。さらに、ご本人の財産のうち日常的に使わない部分を信託銀行等に預ける「後見制度支援信託」や、同様の趣旨で金融機関の専用口座を用いる「後見制度支援預貯金」といった仕組みが用いられることがあると説明されています。

これらの仕組みが使われるかどうか、どう運用されるかは、家庭裁判所や事案によって異なります。詳しくは、家庭裁判所や専門職にご確認ください。

⑥ 費用の話

ここでお伝えする金額は、すべて「目安」です。制度の運用も、裁判所の取り扱いも、変わることがあります。実際の金額は、必ず申立て先の家庭裁判所や、依頼する専門職にご確認ください。

申立てのときにかかるもの

💰 裁判所が案内している費用の項目
後見開始の申立てについて、裁判所が案内している費用には、次のようなものがあります。

  • 申立手数料——収入印紙。後見開始の申立てについては800円分と案内されています
  • 登記手数料——収入印紙。2,600円分と案内されています
  • 連絡用の郵便切手——金額は裁判所によって異なります。申立て先の家庭裁判所にご確認ください
  • 鑑定費用——家庭裁判所が鑑定を必要と判断した場合に、申立人が負担することがあるとされています。金額は事案によります
このほか、診断書の作成費用(医療機関により異なります)、戸籍謄本や住民票の発行手数料、登記されていないことの証明書の手数料などが別途かかります。

これらの金額や取り扱いは変わることがあります。必ず、申立て先の家庭裁判所でご確認ください。

専門職に申立てを依頼する場合には、これとは別に、その専門職への報酬がかかります。金額は事務所によって異なります。依頼する前に、費用の見積もりを確認してください。

後見が始まったあとに、続く費用

ご家族が見落としやすいのが、こちらです。

専門職が後見人等に選任された場合、その方への報酬が発生することがあります。そしてこの報酬は、制度を使っている間、続きます。

📌 報酬の決め方について、説明されていること
  • 報酬は、家庭裁判所が決めます。後見人等が「報酬付与の申立て」を行い、裁判官が判断するという流れで説明されています
  • 金額の基準が法律で決まっているわけではないとされています。裁判官が、対象期間中の事務の内容(財産管理と身上保護)、管理している財産の内容などを総合的に考えて、事案ごとに適正妥当と考えられる額を判断すると説明されています
  • 一部の家庭裁判所は、「報酬額のめやす」を公表しています。そこでは、通常の後見事務を行った場合の基本報酬について目安となる額が示され、管理する財産の額に応じて増える場合や、特別に困難な事務があった場合の付加報酬についての考え方が示されていることがあります
  • 報酬は、ご本人の財産から支払われます。ご家族が自腹で払うものではない、と説明されています
「めやす」は、あくまで一部の裁判所が公表している参考の数値です。裁判所によって、また時点によって異なります。金額の見込みは、必ず家庭裁判所や専門職にご確認ください。
⚠️ ここは、冷静に考えていただきたいところです
報酬はご本人の財産から支払われるため、ご家族の家計から直接出ていくわけではありません。けれど、それはご本人の財産が、その分だけ減っていくということでもあります。

施設費に加えて、この支出が長期にわたって続く可能性がある——これは、あらかじめ知っておいたほうがよい情報だと思います。

だからといって「後見を使うべきではない」という話ではありません。制度を使わなければ動かせない場面は、確実にあります。お伝えしたいのは、「知らないまま始めない」ということだけです。

費用の助成があるかもしれません

多くの市区町村に「成年後見制度利用支援事業」という仕組みがあるとされています。

これは、成年後見制度を利用したいけれど費用の負担が難しい方について、市区町村が申立ての費用や、後見人等への報酬の一部を助成するという趣旨の事業として説明されています。

⚠️ ただし、内容は自治体によって大きく違います
対象となる方の要件(住民税非課税世帯、生活保護を受けている方など)、助成の範囲、申請の方法は、市区町村によって異なります。実施していない、あるいは要件が厳しい自治体もあります。

「うちの市はどうなっていますか」と、直接聞くのがいちばん確実です。問い合わせ先としては、市区町村の高齢福祉・介護保険の窓口、地域包括支援センター、社会福祉協議会が挙げられます。

そのほか、介護費用そのものを軽くする公的な制度については、介護費用を軽くする制度まとめにまとめています。後見の費用だけでなく、月々の負担全体で考えてみてください。

⑦ 知っておきたい注意点——「原則やめられない」ということ

ここは、この記事でもっとも丁寧に書きたい章です。

成年後見制度は、ご本人を守るための仕組みです。けれど、使い始めてから「こんなはずではなかった」と感じるご家族がいるのも事実とされています。

その理由の多くは、制度の性質を知らないまま始めてしまったことにあります。だから、ここに書きます。

⚠️ 1. 原則として、途中でやめることができません(現在の制度)
これが、いちばん大きな点です。

現在運用されている法定後見制度について、一般に次のように説明されています。いったん後見等が始まると、ご本人の判断能力が回復しない限り、ご本人が亡くなるまで続くのが原則である——と。

つまり、「施設の入居契約を結ぶためだけに使って、終わったらやめる」ということが、原則としてできません。「実家を売るために使って、売れたら終わりにしよう」も同じです。

この点は、⑧に書く2026年の法改正で見直されることになっています。ただし、その改正は2026年8月時点ではまだ施行されていません。つまり、いま制度を使い始める場合には、上に書いた「原則やめられない」という性質が当てはまります。
⚠️ 2. 財産の使い方に、制約があります
後見人等が管理するお金は、ご本人の財産です。だから、ご本人のために使うのが原則と説明されています。

そのため、一般に次のような支出は認められないことがあるとされています。

  • 同居している家族の生活費(ご本人の扶養義務の範囲などをどう考えるかは、個別の判断になるとされます)
  • 孫の学費や、家族へのお祝い金
  • 家族が住む家のリフォーム費用
  • 家族への貸付け
「これまで親が出してくれていたから、これからも同じように」とはいかないことがあります。

何が認められて何が認められないかは、事案によります。この記事では判断できません。具体的なことは、家庭裁判所や後見人、専門職にご確認ください。
⚠️ 3. 生前贈与や相続税の対策は、基本的にできないとされています
後見が始まると、ご本人の財産を減らすことになる行為は、原則として行えないと説明されています。生前贈与は、その典型として挙げられます。

この記事では、相続税や贈与税についての具体的な説明も、対策の方法も書きません。それは、この記事を書いている者が扱える範囲を超えているからです。

税金に関することは、必ず税理士にご相談ください。また、後見と税の両方が関わる場面では、司法書士・弁護士と税理士の双方に確認が必要になることがあります。
⚠️ 4. 家族の希望どおりにならないことがあります
専門職が後見人になった場合、ご家族が「こうしてほしい」と伝えても、そのとおりにならないことがあります。

後見人は、ご本人のために職務を行う立場だからです。ご家族の希望とご本人の利益が一致しないと判断されれば、家族の側が思うようには進みません。

これは後見人が不親切だからではなく、制度がそういう仕組みだからです。とはいえ、ご家族にとっては、納得しにくい場面が生じうるということです。

なお、後見人の職務の進め方に疑問がある場合には、家庭裁判所に相談できるとされています。どのような対応が可能かは、家庭裁判所にご確認ください。

それでも、制度が必要になる場面があります

ここまで注意点を並べましたが、この記事は「成年後見を使わないほうがいい」と言いたいのではありません。

実際に、制度がなければ動かない場面があります。

🌿 制度の役割として説明されていること
  • ご本人の財産が、本人以外の誰かによって不当に使われることを防ぐ
  • ご本人が結んでしまった不利益な契約について、取り消すことができる場合がある——訪問販売や、必要のない高額な契約などが例として挙げられます
  • 施設の入居契約や、金融機関での手続きが、法的な根拠をもって進められる
  • 不動産の売却など、本人の財産の処分が必要な場面で、手続きの道筋がつく
  • 身寄りのない方や、親族に頼れない方の生活を支える
  • 「誰が管理しているのか分からない」状態をなくし、家族の間の疑いを避けられる
特に最後の点は、実務でよく語られることです。公的な仕組みの中で管理されているという事実は、きょうだい間の不信を防ぐ働きをすることがあります。

結局のところ、これは「得か損か」で決める話ではありません。「その場面で、必要かどうか」です。

そして、その判断は、この記事ではできません。財産の内容、ご本人の状態、家族の関係、これから何をしなければならないか——全部が関わります。だからこそ、専門職に相談する価値があります。

⑧ 2026年に成立した法改正(まだ施行されていません)

この章は、2026年8月に書いています。ここで扱うのは、すでに成立して公布されたけれど、まだ施行されていない(=まだ効力が生じていない)法律の話です。

最初に、いちばん大事なことを書きます。ここに書く内容は、「これから変わること」であって、「いまこうなっていること」ではありません。

📜 法務省が公表している内容から
法務省は、「民法等の一部を改正する法律」(令和8年法律第45号)および、その施行にともなう関係法律の整理に関する法律(令和8年法律第46号)について、次のように公表しています。

  • 成立——令和8年(2026年)6月17日
  • 公布——令和8年(2026年)6月24日
成年後見制度に関する改正の内容として、法務省は、後見及び保佐の制度を廃止して補助の制度に一元化し、ご本人にとって必要な範囲での利用ができるようにするという趣旨のことを示しています。

施行の時期については、成年後見制度の見直しに関する部分は、公布の日から「2年6月を超えない範囲内において政令で定める日」から施行される、とされています。
⚠️ 整理します:今はまだ「これまでどおり」です
時点 どうなっているか
2026年8月(今) 改正法は成立・公布済みですが、まだ施行されていません。実際に運用されているのは、③に書いた後見・保佐・補助の3類型です。いま申立てをすれば、この現在の仕組みで進みます
施行の日以降 法務省が示す趣旨によれば、後見と保佐が廃止され、補助に一元化される方向とされています。ただし、施行日は「政令で定める日」とされているため、具体的な日付はまだ決まっていません
この記事では、施行日を断定しません。公布の日から2年6月を超えない範囲内、という枠組みだけが決まっている状態です。最新の情報は、法務省や裁判所の公表資料でご確認ください。

この改正を、どう受け止めればいいか

「制度が変わるなら、待ったほうがいいのだろうか」——そう思われるかもしれません。

この記事では、待つべきかどうかの判断をしません。それは、目の前の状況によって答えが変わるからです。

🌿 考え方の材料として
  • 施行までには、まだ時間があります。公布から2年6月を超えない範囲、とされています。その間、支払いや契約は待ってくれません
  • 施行後に、すでに始まっている後見等がどう扱われるかについては、経過措置などの詳細な運用が関わります。この記事では書けません
  • 「制度が変わるらしいから、いま何もしない」という判断が、かえって困る結果になることもあります
  • 逆に、急いで決める必要がない状況なら、専門職に相談したうえで時期を考える、という選択もありえます
いずれにせよ、判断できるのは、状況を具体的に聞いた専門職です。「2026年に法改正が成立したと聞いたのですが、うちの場合はどう考えたらいいですか」——そう聞いてみてください。それは、十分に正当な質問です。

ひとつだけ、この改正について申し添えます。「後見はいったん始めるとやめられない」という、⑦に書いた点への問題意識が、この見直しの背景にあると説明されています。制度が、より柔軟な方向に向かおうとしている——そう受け取ってよいのだと思います。

ただし、繰り返しますが、それは将来の話です。いま困っていることの答えにはなりません。だから、この記事は現在運用されている制度を中心に書いています。

⑨ 任意後見という、元気なうちの選び方

ここからは、法定後見以外の選択肢を見ていきます。

まず任意後見です。これは、ご本人の判断能力が十分あるうちにしか使えません。そのため、すでに親の判断能力が低下している場合には選べません。

それでも、この記事に書く理由が2つあります。ひとつは、親がまだ元気な段階で読んでくださっている方がいるから。もうひとつは、この記事を読んでいるあなた自身の、将来の話でもあるからです。

📘 任意後見の、おおまかな流れ
  • 1. ご本人が、任せる人と、任せる内容を決めます——法務省の説明では、任意後見制度では本人が任意後見人となる方やその権限を自分で決めることができるとされています
  • 2. 公正証書で契約を結びます——任意後見契約は公正証書によって作成することとされています。公証役場で手続きをします
  • 3. 判断能力が低下したあと、家庭裁判所に申立てをします——任意後見監督人の選任を申し立てます
  • 4. 監督人が選任されると、契約の効力が生じます——ここから、任意後見人としての職務が始まります
つまり、契約を結んだ時点ではまだ動き出しません。「必要になったときに、裁判所の手続きを経て始まる」という仕組みです。
📗 法定後見との違いとして説明されていること
  • 誰が支援するか——法定後見は家庭裁判所が選任します。任意後見は、ご本人があらかじめ決めた方です
  • 権限の範囲——法定後見の権限は基本的に法律で定められているとされます。任意後見は、契約で定めた代理権の範囲とされます
  • 取消権——法務省の説明では、任意後見人には取消権がないとされています。ご本人が不利益な契約を結んでしまった場合に、それを取り消すことができない、という違いです
  • 監督人——法定後見では必要に応じて選任されるとされますが、任意後見ではすべての事案で監督人が選任されると説明されています
それぞれに向き・不向きがあります。「どちらが良い」と一概には言えません。
⚠️ 任意後見について、注意しておきたいこと
元気なうちにしか結べません。「そろそろ考えないと」と思ったときには、間に合わないことがあります。

契約の内容によっては、「見守り契約」や「財産管理等の委任契約」を組み合わせて設計することがあると説明されます。ただし、設計は専門的です。この記事では立ち入りません。

費用(公正証書の作成にかかる費用、専門職に依頼する場合の報酬、監督人への報酬など)については、公証役場や専門職にご確認ください。この記事では金額を示しません。

誰に任せるかは、非常に重い決定です。ご本人がご自分で納得して決めることが前提であり、家族が誘導して結ばせるようなものではありません。

⑩ 日常生活自立支援事業——後見より軽い仕組み

成年後見制度は、大きな仕組みです。「そこまでは必要ないけれど、日々のお金の管理に不安がある」——そういう段階の方に向けた、もう少し軽い仕組みがあります。

それが「日常生活自立支援事業」です。この名前を初めて聞く方は、多いと思います。

📘 どういう事業か
厚生労働省の説明では、次のような趣旨で紹介されています。

認知症高齢者、知的障害のある方、精神障害のある方などのうち、判断能力が不十分な方が、地域で自立した生活を送れるよう、利用者との契約に基づいて、福祉サービスの利用援助などを行うもの——とされています。

実施主体は、都道府県・指定都市の社会福祉協議会で、窓口の業務などは市区町村の社会福祉協議会等で行われていると説明されています。

支援の内容として挙げられているのは、次のようなものです。

  • 福祉サービスの利用に関する情報提供、相談、利用の手続きの援助
  • 日常的な範囲の金銭管理——医療費や家賃、公共料金の支払い、預金の払い戻しなど
  • 通帳や証書などの書類の預かり(実施主体によって取り扱いが異なります)
  • 住宅の賃貸、日常生活上の消費契約、行政手続きに関する援助など
比べる点 説明されている違い
扱える範囲 日常生活自立支援事業は福祉サービスの利用援助や、日常的な金銭の管理に限られるとされます。成年後見制度は、日常的な金銭にとどまらず財産全般の管理や、施設の入退所などの契約(身上保護)まで扱えるとされます
必要な判断能力 日常生活自立支援事業は契約に基づくため、この事業の契約の内容について判断できる能力がある方が対象とされています。法定後見の場合、その判断能力は必要とされません
やめられるか 日常生活自立支援事業はご本人の意思で終了できるとされます。現在の法定後見は、原則として途中でやめることができないとされています(⑦)
費用 日常生活自立支援事業は実施主体が利用料を設定しているとされます。国の資料では訪問1回あたりの利用料の平均が示されているほか、契約締結前の初期相談等にかかる費用や、生活保護を受けている世帯の利用料は無料とされています。成年後見の報酬は家庭裁判所が決めます(⑥)
⚠️ 利用料や運用は、地域によって違います
利用料の額、支援の内容、待機の状況は、実施主体(都道府県・指定都市の社会福祉協議会)によって異なります。地域によっては、利用の申し込みから開始まで時間がかかることもあると言われます。

まずは、お住まいの市区町村の社会福祉協議会にお問い合わせください。どこに連絡すればよいか分からない場合は、地域包括支援センターに聞けば案内してもらえます。

なお、この事業と成年後見制度は、対立するものではありません。状況の変化に応じて、この事業から成年後見制度に移行することもある、と説明されています。

「後見までは重すぎる気がする」と感じている方にとって、この事業は知っておく価値のある選択肢です。ただし、ご本人が契約の内容を判断できることが前提なので、状態が進んでからでは使えないことがあります。ここでも、早めに相談することが効いてきます。

⑪ 家族信託(民事信託)という選択肢もあります

この章は、意識的に短く書きます。理由は、この記事を書いている者に、この仕組みを詳しく説明できるだけの専門性がないからです。

家族信託(民事信託)と呼ばれる仕組みがあります。ご本人(財産を持っている人)が、信頼できる家族などとの契約によって、財産の管理や処分を託す——おおまかには、そういう仕組みとして説明されています。

📌 一般に説明されている、おおまかな特徴
  • 契約なので、ご本人に判断能力があるうちに結ぶ必要があるとされています
  • 託した財産について、託された側(多くは子など)が、契約で定めた範囲で管理・処分できるとされます
  • 成年後見と違い、家庭裁判所の関与が原則としてないため、設計の自由度が高いと説明されることがあります
  • 一方で、身上保護(介護や医療の契約など)は、この仕組みではカバーされないとされます
  • 契約の設計が専門的で、税務の扱いも関わります
⚠️ この記事では、ここまでにします
家族信託は、契約の設計次第で結果が大きく変わる仕組みだと言われています。「こういう場合はこうすればよい」と、一般的な記事で書けるものではありません。

この記事では、「そういう選択肢が存在する」ということだけをお伝えします。具体的な検討は、弁護士・司法書士などの専門職に、そして税務については税理士にご相談ください。

また、この記事では、特定の事業者やサービスをおすすめすることはしません。インターネット上には家族信託を扱う民間の事業者が多数ありますが、どこに頼むべきかについては、この記事では何も申し上げません。迷われる場合は、まず各地の弁護士会・司法書士会の相談窓口や、法テラスといった公的な入り口から確認されることをおすすめします。

「家族信託があるから成年後見は要らない」という単純な関係でもないとされています。どちらが適しているか、あるいは組み合わせるべきかは、事情によります。

⑫ 銀行の代理人サービス・代理人カードについて

ここは、①で書いた「口座からお金が動かせない」問題に対する、金融機関側の備えの話です。

そして、この章でいちばん大事なことを先に書きます。取り扱いは、金融機関によって違います。

🏦 一般に紹介されている、いくつかの仕組み
  • 代理人カード(家族カード)——ご本人の口座について、家族が使えるキャッシュカードを追加で発行する仕組みです。発行にはご本人の手続きが必要とされるのが一般的で、つまり元気なうちに手続きしておく必要があります
  • 代理人の届出・指名の手続き——ご本人が代理人を届け出ておく仕組みです。金融機関によって名称も、代理人ができる取引の範囲も異なります
  • いわゆる「予約型」の代理人サービス——ご本人に判断能力があるうちに代理人を指定しておき、将来、判断能力が低下したと確認された段階で、その代理人が一定の取引をできるようにするという趣旨のサービスを設けている金融機関があります。名称や条件は各社で異なります
いずれも、「どの金融機関にもある」わけではありません。あるかどうか、条件は何か、何ができるのか——取引先の金融機関に、直接お尋ねください。

①で紹介した全国銀行協会の「金融取引の代理等に関する考え方」(2021年2月18日公表)は、こうした流れの背景にあるものです。ただし繰り返しますが、この文書には「会員各行に一律の対応を求めるものではない」という趣旨の注記があります。

⚠️ だから、こういうことが普通に起こります
「A銀行ではできたのに、B銀行では断られた」——これは、対応した人が悪いのではなく、金融機関ごとに考え方や手続きが違うために起こります。

ですから、複数の口座がある場合、それぞれに確認が必要になることがあります。「一つ聞けば全部同じ」ではありません。

また、サービスの名称・条件・取り扱いは変わります。この記事に書いた内容も、あくまで一般的な説明です。必ず、その金融機関にご確認ください。
💡 いま、できること
  • 親がまだ元気なら、取引先の金融機関に「将来に備えて、どんな仕組みがありますか」と聞いてみる——親と一緒に、あるいは親から聞いてもらう形で。これは、いちばん費用がかからない備えです
  • すでに判断能力が低下している場合は、正直に事情を伝えて、その金融機関でどういう対応が可能かを相談する——隠すより、そのほうが道が見つかることがあります
  • 「本人の医療費や施設費の支払いのために必要である」という事情は、はっきり伝える——全国銀行協会の考え方でも、ご本人の利益に適合することが明らかな場合が触れられています。ただし、必ず応じてもらえるという意味ではありません
  • 断られたときは、何が足りないのかを聞いておく——診断書が必要なのか、後見の手続きが前提なのか。次の一手が見えます

⑬ 親と話しておきたいこと/立て替えの記録の残し方

最後の章です。ここは、制度の話ではなく、今日からできることの話です。

親と、どう話すか

お金の話は、切り出しにくいものです。「財産を狙っていると思われるのでは」という不安から、何年も話せないままの方がいます。

その気持ちは、とてもよく分かります。そのうえで、いくつか、語られている工夫を書きます。

🌿 話しやすくするための、いくつかの考え方
  • 「いくらあるか」ではなく「どこにあるか」の話にする——金額を聞くと身構えられます。「困ったときに、どこを見ればいいか教えて」なら、話が続きやすいと言われます
  • 自分の話から入る——「自分もそろそろ整理しようと思って」「保険を見直したんだけど」。親を心配する話より、こちらのほうが対等に聞こえます
  • きっかけの時期を使う——入院や手術のあと、確定申告の時期、年金の通知が届いたとき、家族の誰かに何かあったとき。自然に話題にできる場面があります
  • 一度で終わらせようとしない——一回の会話で全部を決めなくて構いません。「話題にできた」だけで前進です
  • きょうだいがいるなら、できるだけ同席か、事後の共有を——一人だけが親とお金の話をした、という状態が、後々の火種になることがあります
そして、話せないまま状況が進むことも、普通にあります。それはご家族の努力が足りなかったからではありません。話せなかった場合にどうするかを考えるのが、この記事の①〜⑫です。

立て替えたお金の、記録の残し方

ここが、この記事でいちばん実践的な部分かもしれません。

②で書いたとおり、実際には、子が親のお金を管理し、あるいは自分のお金で立て替えているご家庭が多くあります。そのこと自体を、この記事は責めません。

ただ、記録がないと、あとで困るのは、まじめにやってきた人のほうです。これは、何度でも書いておきたいことです。

📝 記録として、残しておきたいもの
  • 日付・内容・金額・支払い方法——ノートでも、表計算ソフトでも、スマートフォンのメモでも構いません。形式より、続けられることのほうが大事です
  • そのお金が「誰のお金」だったか——親の口座から出したのか、自分が立て替えたのか。ここが混ざると、あとで説明できなくなります
  • 領収書・レシート——月ごとに封筒に入れておくだけでも違います。施設費の請求書、医療費の領収書、おむつ代や日用品のレシート
  • 通帳の記帳を、こまめに——記帳が空いていると、あとから記録を作り直すのが大変になります。ネット取引の場合は、明細の保存を
  • 大きな支出は、理由も一言書いておく——「◯月◯日 ◯◯円 入居一時金」のように、何のためのお金かが分かるように
🌿 できれば、やっておきたいこと
  • 親のお金と、自分のお金を混ぜない——可能なら、親の費用は親の口座から。立て替えた場合は、立て替えとして明確に記録する。混ぜないことが、いちばん強い自衛策だと言われます
  • きょうだいに、定期的に共有する——月に一度、記録の写真を1枚送るだけでも違います。「聞かれたら見せる」ではなく「聞かれる前に見せている」状態が、疑いを生みにくくします
  • 誰も見ていないところで管理しない——一人で抱えることは、ご本人にとっても、あなたにとっても危うい状態です
  • ケアマネジャーや相談員に、状況を伝えておく——「いま、費用は私が管理しています」と共有しておくと、必要なときに相談しやすくなります
⚠️ 記録は、あなたを責めるためのものではありません
ここまで読んで、「疑われる前提で書かれている」と感じた方がいるかもしれません。そうではありません。

記録は、あなたを守るためのものです。親のために動いてきた人ほど、あとになって説明を求められたときに、傷つきます。「あんなにやってきたのに、疑われるのか」と。

記録があれば、その場で説明が終わります。それだけのことです。

そして、これから始めれば十分です。「今までの分の記録がない」と焦らないでください。今日から書き始めることに、意味があります。

きょうだいがいる場合

お金の管理は、きょうだい間の分担の問題と、必ずといっていいほど結びつきます。

近くに住んでいる子が実務を担い、遠方のきょうだいは状況が見えない。その差が、そのまま不信になっていくことがあります。

お金の記録を共有することは、この不信を防ぐ、いちばん具体的な方法です。介護そのものの分担については、介護をきょうだいでどう分担するか|話し合いとお金の決め方にまとめています。お金の管理の話をする前に、そちらを読んでおくと、話しやすくなるかもしれません。

迷ったときの相談先

📞 この記事で挙げた相談先のまとめ
  • 地域包括支援センター——高齢者に関する総合相談窓口。どこに相談すればよいか分からない段階で、まずここ。ご本人が同行しなくても、家族だけで相談できます
  • 市区町村の高齢福祉・介護保険の窓口——成年後見制度利用支援事業、市町村長申立てなど、自治体の仕組みについて
  • 市区町村・都道府県の社会福祉協議会——日常生活自立支援事業の相談窓口。成年後見に関する相談を受けているところもあります
  • 家庭裁判所(手続案内)——申立ての手続きや必要書類について。「後見ポータルサイト」で書式や手引きも公開されています
  • 弁護士・司法書士——申立ての代理、制度の選択に関する相談
  • 税理士——相続税・贈与税など、税に関すること。この記事では扱いません
  • 法テラス(日本司法支援センター)——法的トラブルの総合案内。条件を満たす場合の無料法律相談や費用の立替え制度があるとされています
  • ケアマネジャー——本人情報シートの作成、日々の状況の相談。いちばん身近な専門職です
  • 中核機関・成年後見センター——市区町村によっては、成年後見制度の相談を担う専門の窓口が設けられていることがあります。あるかどうかは自治体にご確認ください
窓口の全体像は、介護の相談はどこにすればいい?無料で使える相談窓口まとめにもまとめています。
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費用の見通しが立つと、お金の話も進めやすくなります
「毎月いくらかかるのか」が分からないままだと、どう管理するかも決められません。どんな種類の施設があり、費用がどのくらいかかるのかを聞いておくだけでも、備えになります。無料で相談でき、急いで決める必要はありません。「まだ具体的には考えていない」と伝えて構いません。
▶ 施設について無料で相談する

📌 まとめ

  • 預金は名義人本人のもので、契約も本人と金融機関の間のものです。だから原則として、本人以外は動かせません。「操作ができる」ことと「そうする権利がある」ことは、別のことです
  • いわゆる「口座凍結」は法律用語ではなく、対応は金融機関や状況によって異なります。全国銀行協会が2021年2月18日に公表した考え方では、認知・判断能力が低下した方との取引について成年後見制度等の利用を促すのが基本とされる一方、本人の医療費の支払いなど本人の利益に適合することが明らかな場合には、代理権のない親族による払い出しに応じうるという考え方が示されています。ただし各行に一律の対応を求めるものではない、と注記されています
  • 不安でも、まとめて引き出すような行動は避けてください。あとで、きょうだいや他の相続人との間で深刻な問題になることがあります
  • まず「お金の地図」を作ってください。口座、年金の振込先、引き落とし、保険、不動産、借入、通帳や印鑑の所在。できれば、ご本人がまだ判断できるうちに、ご本人と一緒に
  • 成年後見制度には、法定後見と任意後見の2つの入り口があります。法定後見は判断能力が低下した後に家庭裁判所が選任するもの、任意後見は元気なうちに本人が決めておくものと説明されています
  • いま実際に運用されている法定後見には、後見・保佐・補助の3類型があります。裁判所の説明では、後見は判断能力が欠けているのが通常の状態の方、保佐は著しく不十分な方、補助は不十分な方が対象とされます。どの類型かを決めるのは家庭裁判所です
  • 後見人の仕事は、財産管理と身上保護の2つです。ただし身元保証人になることとは別とされ、医療行為への同意権はないと説明されるのが一般的です
  • 申立先は本人の住所地を管轄する家庭裁判所です。申立てができるのは本人、配偶者、四親等内の親族、検察官などとされ、市区町村長が申し立てる仕組みもあります
  • 診断書(成年後見制度用)と本人情報シートが必要です。本人情報シートは、ケアマネジャーなど日頃支援している福祉関係者に記載してもらう書面とされています。後見を考え始めたら、担当のケアマネジャーに相談する意味があります
  • 裁判所は、申立てから審判までおおむね1〜2か月程度かかると案内しています(鑑定がある場合はさらに)。書類集めの期間も加わるため、目の前の支払いは、後見の手続きとは別に相談してください。実際の見通しは家庭裁判所にご確認ください
  • 後見人を決めるのは家庭裁判所です。裁判所は「候補者として記載された方が必ず選任されるわけではありません」と案内しています。令和7年の統計では、親族が選任されたものが約7,000件、親族以外が約35,700件とされ、専門職が選任されることが多い状況が続いています
  • 費用は、申立て時のもの(収入印紙・郵便切手・鑑定費用など)と、始まったあとに続くもの(専門職への報酬)があります。報酬は本人の財産から支払われ、金額は家庭裁判所が事案ごとに判断します。法律で決まった額ではありません。金額は必ず家庭裁判所や専門職にご確認ください
  • 費用の助成があるかもしれません。市区町村の「成年後見制度利用支援事業」について、市区町村の窓口・地域包括支援センター・社会福祉協議会にお尋ねください。内容は自治体によって大きく異なります
  • いまの制度では、いったん始めると原則としてやめられません。財産の使い方にも制約があり、生前贈与や相続税の対策は基本的にできないとされています。税に関することは必ず税理士へ
  • 2026年6月17日に「民法等の一部を改正する法律」が成立し、6月24日に公布されました。後見・保佐を廃止して補助に一元化し、必要な範囲での利用を可能にするという趣旨です。ただし、成年後見に関する部分は「公布から2年6月を超えない範囲内において政令で定める日」に施行されるとされており、2026年8月時点ではまだ施行されていません。つまり、いま申立てをする場合は、これまでどおりの3類型の仕組みで進みます
  • 任意後見は、元気なうちにしか結べません。公正証書で契約し、判断能力が低下した後に家庭裁判所へ任意後見監督人の選任を申し立てて効力が生じるとされています
  • 「後見までは重い」と感じる段階なら、日常生活自立支援事業という選択肢があります。社会福祉協議会が実施し、日常的な金銭管理や福祉サービスの利用援助を行うもの。ご本人に契約内容を判断できる能力があることが前提です
  • 家族信託(民事信託)という仕組みもあります。ただし設計が専門的で税務も関わるため、この記事では「存在する」ことだけをお伝えしました。検討は専門職へ、税務は税理士へ
  • 金融機関の代理人カードや代理人サービスは、金融機関ごとに扱いが違います。「A銀行でできたことがB銀行ではできない」は普通に起こります。親が元気なうちに「どんな備えの仕組みがありますか」と聞いておくのが、いちばん費用のかからない備えです
  • そして、記録を残してください。日付・内容・金額・支払い方法、そのお金が誰のお金だったか。領収書を月ごとに。親のお金と自分のお金を混ぜない。きょうだいには、聞かれる前に共有する
  • 記録は、あなたを責めるためのものではなく、あなたを守るためのものです。今までの分がなくても構いません。今日から書き始めることに意味があります

お金の話は、介護の中でいちばん後回しにされやすいところだと思います。目の前の体調や、施設のことで手一杯になる。そして、気づいたときには、口座が動かせなくなっている。

けれど、この記事を読んでいる時点で、あなたはもう後回しにしていません。調べようとしているというだけで、十分に前に進んでいます。

成年後見制度は、正直に言って、分かりにくい制度です。使えば解決するとも限らないし、使わずに済む方法があるかもしれない。その判断は、この記事ではできません。できるのは、「そういう仕組みがあって、こういう性質のものだ」とお伝えすることまでです。

だから、最後にお願いがあります。一人で決めないでください。地域包括支援センターでも、社会福祉協議会でも、家庭裁判所の手続案内でも構いません。「親のお金のことで困っているのですが」の一言から始めて、何の問題もありません。そこから整理してくれるのが、相談員や専門職の仕事です。

そして、親のお金を管理することは、後ろめたいことではありません。それは、誰かがやらなければならない仕事で、あなたが引き受けているというだけのことです。記録を残し、きょうだいに共有し、困ったら相談する。それができていれば、堂々としていてください。

⚠️ この記事について
この記事は、法律の専門家ではない一人の家族が、裁判所・法務省・厚生労働省・全国銀行協会などが公表している情報をもとにまとめたもの(2026年8月時点)です。特定の家庭の事例は、実在のものも、たとえ話として作ったものも記載していません。
ここに書いたことは、法的な助言ではありません。「この方法なら通ります」「こうするのが得です」といった判断はしていません。実際の手続きや判断は、必ず家庭裁判所や、弁護士・司法書士などの専門職にご確認ください。
金額・期間・必要な書類は、裁判所や自治体、金融機関によって、また時期によって異なります。この記事の数値は目安として紹介したものであり、これをもとに手続きを進めないでください。必ず、手続き先に直接ご確認ください。
相続税・贈与税など、税に関する判断はしていません。節税や相続対策の方法も書いていません。税に関することは、必ず税理士にご相談ください。
制度の運用は、自治体・裁判所・金融機関によって差があります。また、2026年6月に成立・公布された民法等の改正により、成年後見制度は今後見直されることが決まっていますが、2026年8月時点で、その改正はまだ施行されていません。この記事の本文は、現在運用されている制度を前提に書いています。最新の情報は、法務省・裁判所・お住まいの市区町村の公表資料でご確認ください。
特定の民間サービスや事業者をおすすめすることは、この記事ではしていません。
📚 この記事で参考にした情報
  • 裁判所(後見ポータルサイト等)による「成年後見制度(後見・保佐・補助)の概要」に関する案内——3類型それぞれの対象(判断能力が欠けているのが通常の状態/著しく不十分/不十分)、申立てから審判までおおむね1か月から2か月程度かかるとされること、鑑定を行う場合はさらに期間が必要とされること、申立書に候補者として記載された方が必ず選任されるわけではないことについて
  • 裁判所による「後見開始の申立て」に関する案内——申立てをすることができる人(本人、配偶者、四親等内の親族、検察官等)、申立てに必要な費用(申立手数料の収入印紙、登記手数料の収入印紙、連絡用の郵便切手、鑑定費用)、標準的な申立添付書類(戸籍謄本、住民票、診断書、本人情報シート、健康状態に関する資料、登記されていないことの証明書、財産・収支に関する資料等)について。金額・書類は変更されることがあります
  • 裁判所による「成年後見制度における診断書作成の手引・本人情報シート作成の手引」および本人情報シートの書式に関する案内——本人情報シートは、日頃から本人を支援している福祉関係者(ケアマネジャー、ケースワーカー等)に記載してもらう書面であり、医師が診断書を作成する際の補助資料として活用するとともに、家庭裁判所の審理のために提出する書類とされていることについて
  • 裁判所による「報酬付与の申立て」に関する案内、および一部の家庭裁判所が公表している「成年後見人等の報酬額のめやす」——報酬は報酬付与の申立てに基づき家庭裁判所が決めること、金額の基準が法律で定められているわけではなく、裁判官が事務の内容や管理する財産の内容等を総合考慮して事案ごとに判断するとされること、基本報酬・付加報酬という考え方が示されていることについて。「めやす」は一部の裁判所が公表しているものであり、裁判所や時点によって異なります
  • 最高裁判所事務総局家庭局「成年後見関係事件の概況」(令和7年1月〜12月)——成年後見人等と本人との関係別の件数について。親族が選任されたものが約7,000件、親族以外が約35,700件とされ、親族以外には司法書士・弁護士・社会福祉士・市民後見人等が含まれること。数値は年によって変わります
  • 法務省「成年後見制度・成年後見登記制度Q&A」——法定後見制度と任意後見制度の違いについて。法定後見では家庭裁判所が成年後見人等を選任し権限も基本的に法律で定められていること、任意後見では本人が任意後見人となる方やその権限を自分で決められること、任意後見契約は公正証書によること、任意後見では監督人が選任されること、任意後見人には取消権がないとされることについて
  • 法務省「『民法等の一部を改正する法律』(成年後見及び遺言の制度の見直し)について」——令和8年(2026年)6月17日成立・6月24日公布(令和8年法律第45号および第46号)、後見及び保佐の制度を廃止して補助の制度に一元化し本人にとって必要な範囲での利用を可能にするという改正の趣旨、成年後見制度に関する部分の施行が公布の日から2年6月を超えない範囲内において政令で定める日とされていることについて。施行日は今後の政令で定められます。2026年8月時点では未施行であり、本文は現在運用されている制度を前提に書いています
  • 厚生労働省「日常生活自立支援事業」に関する公表情報——事業の目的と対象者(判断能力が不十分な方であって、本事業の契約内容について判断し得る能力を有していると認められる方)、実施主体が都道府県・指定都市社会福祉協議会であり窓口業務等は市町村の社会福祉協議会等で実施されること、支援内容(福祉サービスの利用援助、日常的な金銭管理、書類等の預かり等)、利用料の考え方(実施主体が設定し、初期相談等や生活保護受給世帯は無料とされること)について。利用料・運用は地域によって異なります
  • 市区町村および社会福祉協議会が公表している「成年後見制度利用支援事業」に関する情報——申立費用や後見人等への報酬について自治体が助成を行う事業があること、対象要件(住民税非課税世帯、生活保護受給者など)や助成内容が自治体によって異なることについて。実施の有無・内容は自治体によって大きく異なります
  • 一般社団法人 全国銀行協会「金融取引の代理等に関する考え方および銀行と地方公共団体・社会福祉関係機関等との連携強化に関する考え方」(2021年2月18日公表)——認知・判断能力が低下した顧客本人との取引においては本人の財産保護の観点から親族等に成年後見制度等の利用を促すのが基本とされること、本人の医療費の支払手続き等、本人の利益に適合することが明らかな場合に代理権のない親族による払い出しに応じることがありうるとされること、銀行が診断書や複数行員による面談等で確認するとされること、そして「会員各行に一律の対応を求めるものではなく、個別の状況等により本考え方と異なる対応が取られるケースもありうる」旨の注記があることについて
  • 金融機関の代理人カード・代理人サービスに関する、一般的な説明——名称・条件・取扱いが金融機関によって異なること、本人に判断能力があるうちの手続きが必要とされることが多いことについて。具体的な取扱いは各金融機関にご確認ください
  • 家族信託(民事信託)に関する、一般的な説明——本人に判断能力があるうちの契約が必要とされること、家庭裁判所の関与が原則ないとされること、身上保護はカバーされないとされること、設計と税務が専門的であることについて。この記事では、選択肢として存在することのみを紹介しています
  • 法テラス(日本司法支援センター)の民事法律扶助に関する、一般的な説明——収入等の条件を満たす場合に無料の法律相談や費用の立替えを行う制度があるとされることについて。条件・内容は変わることがあります
制度や法律の内容は、要約してお伝えしています。正確な内容は原文を、実際の運用や手続きの可否は家庭裁判所・お住まいの市区町村・地域包括支援センター・社会福祉協議会・各金融機関に、法律に関することは弁護士や司法書士に、税に関することは税理士にご確認ください。この記事の内容をもって、手続きを進めたり、ご家族の対応を決めたりしないでください。

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