親が入院したら|
退院までの流れと、退院後の暮らしの決め方
知らせを受けた瞬間、頭が真っ白になって、何から手をつければいいのか分からなくなる。それはごく自然なことです。
ただ、やるべきことには順番があります。そして、その順番を一緒に考えてくれる人が、実は病院の中にいます。
この記事では、入院の直後から退院・転院までに家族が向き合うことを、時間の流れに沿って整理しました。今日ぜんぶを読む必要はありません。目次から、今いちばん近いところだけ読んでいただければ十分です。
また、医療や介護の制度は改定によって内容が変わります。2026年6月にも診療報酬(医療の制度上の決まりごと)の改定が行われており、入院できる日数の目安などは変わっている可能性があります。この記事では日数や金額の断定を避けていますので、具体的な数字は必ず入院先の病院や、加入している健康保険の窓口でご確認ください(2026年7月時点の情報をもとにまとめています)。
① まず、深呼吸を。今日やることは多くありません
連絡を受けた直後、多くの方が「これから全部どうしよう」と、先の先まで一気に考えてしまいます。仕事はどうするのか、介護になったらどうするのか、お金は足りるのか——。
ですが、その全部を今日決める必要はありません。というより、決められません。まだ情報がそろっていないからです。
入院というのは、乱暴に言ってしまえば「治療のための時間」であると同時に、家族にとっては考えるための時間でもあります。病院にいる間、親御さんは専門職に見守られています。その間に、こちらは順番に手を打っていけばいい。そう考えると、少しだけ肩の力が抜けるのではないでしょうか。
- 入院直後——手続きと連絡。情報を集める段階
- 入院してしばらく——病院の相談員に会う。退院後の暮らしを考え始める。必要なら介護保険を申請する
- 退院が見えてきたころ——関係者で話し合い(退院前カンファレンス)。自宅に戻るのか、転院するのか、別の暮らし方を選ぶのかを決める
- 退院後——新しい暮らしを回しながら、少しずつ調整していく
ひとつだけ、早めに知っておいてほしいこと
それは、病院には家族の相談に乗ってくれる専門の職員がいるということです。この記事でいちばんお伝えしたいのは、実はこの一点かもしれません。くわしくは③で説明しますが、「家族だけで抱えるものではない」ということを、まず頭の片隅に置いておいてください。
② 入院直後の数日でやっておきたいこと
ばたばたしている時期ですが、この数日でやっておくと、あとがずいぶん楽になることがあります。優先度の高いものから並べます。
1. 病院に持っていくもの・提出するものを確認する
入院の手続きで必要になるものは病院によって違いますが、一般的には次のようなものが挙げられます。救急搬送でその場に持ち込めなかったものは、あとから届ければ大丈夫なことがほとんどです。
- 健康保険証(マイナ保険証)・診察券——本人確認と医療費の計算に必要です
- お薬手帳、または飲んでいる薬そのもの——今どんな薬を飲んでいるかは、治療する側にとって非常に大事な情報です。手帳がなければ、薬の袋やシートをそのまま持っていっても構いません
- 介護保険被保険者証——すでに要介護・要支援の認定を受けている場合。持っていれば早めに伝えておくと話が早くなります
- 印鑑——入院の同意書などに使うことがあります
- 各種の医療証——お住まいの自治体や加入先で交付されているものがあれば
最初に本当に必要なのは、保険証と薬の情報。ここさえ押さえておけば、あとは追いかけで大丈夫です。
2. 家族の中で「窓口になる人」を決める
病院は、病状の説明や今後の相談をするときに、家族の中で中心になる方を確認することが一般的です。「キーパーソン」と呼ばれることもあります。
これは「その人がすべて背負う」という意味ではありません。病院と連絡を取り合う窓口を一本にしておかないと、話が食い違ってしまうためのものです。
- 連絡がつきやすい人が向いています。必ずしも長男・長女である必要はありません
- 病院に足を運びやすい人だと、説明を直接聞けるので進めやすくなります
- 窓口=全部やる人、ではありません。手続きは兄、お金の確認は妹、というように役割を分けても構いません
- 決まったら、他のきょうだいにも共有を。「聞いていない」があとあとの溝になりがちです
3. きょうだい・親族に連絡し、情報を共有する場を作る
連絡は早いほうがいいです。あとから知った側は、どうしても取り残された気持ちになります。
実務的におすすめなのは、きょうだいでメッセージのグループを作り、そこに病院からの説明を書き残していくことです。個別に何度も同じ説明を電話でするのは、思っている以上に消耗します。文字で残しておけば、あとから読み返すこともできます。
4. 職場に、早めに一報を入れる
「まだ何も決まっていないから、話すのは早い」と考えて黙っていると、あとで急に休みが必要になったときに動きづらくなります。
詳しい事情まで説明する必要はありません。「親が入院しまして、しばらく対応が必要になるかもしれません」——最初はこの一言で十分です。介護のために使える休みの制度もありますので、そのあたりは仕事と介護の両立|介護休業・介護休暇など使える制度にまとめています。
5. 親の生活まわりの情報を、少しずつ確かめる
親御さんが一人暮らしだった場合、入院によって家が急に空き家になります。慌てなくていいのですが、頭の隅に入れておきたいことがあります。
- 冷蔵庫の中身、戸締まり、火の元——最初に家に寄るときに確認を
- ペットがいる場合の世話——早めに手を打つ必要があります
- 定期的に届くもの——新聞、宅配の食事サービスなど。止めるかどうかの判断が必要になることがあります
- 公共料金や家賃の支払い——引き落としであれば当面は問題ありませんが、残高は気にしておきたいところです
- 通っていた病院、飲んでいた薬——入院先に伝える材料になります
ただし、ご本人の同意がないまま通帳や印鑑を動かすと、あとからきょうだい間のトラブルになりやすい点には注意してください。ご本人が判断できる状態であれば必ず本人に確認し、お金の動きは記録に残しておくこと。難しい状況であれば、後述の相談員や地域包括支援センターに相談してみてください。
③ 病院には「相談できる人」がいます
ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。
入院中の家族の悩みは、治療そのものよりも「このあとの暮らしをどうするか」に関することが多いのではないでしょうか。退院したあと家で見られるのか、お金は足りるのか、介護保険は使えるのか——。
これらは、主治医や病棟の看護師さんに聞くのが少しためらわれる内容かもしれません。ですが、まさにこういう相談を受けるための職種が、病院の中にいます。
医療ソーシャルワーカー(MSW)とは
医療ソーシャルワーカー——英語の頭文字を取ってMSWと呼ばれます。ひとことで言えば、病院の中にいる、暮らしとお金と手続きの相談員です。
社会福祉士や精神保健福祉士といった福祉の国家資格を持つ方が担当していることが多く、患者さんやご家族が抱える生活面の困りごとについて、使える制度を紹介したり、退院後の生活に向けて外部の関係機関と連絡を取ったりしてくれます。
- 退院後、どこで暮らすか——自宅に戻れそうか、別の選択肢があるか
- 介護保険のこと——申請の仕方、入院中に申請できるか、認定までの流れ
- 医療費のこと——負担を軽くする制度があるか、どこに申請するか
- 転院のこと——他の病棟や病院に移る選択肢があるか、どこが候補になるか
- 自宅に戻る場合の準備——訪問のサービス、福祉用具、手すりなどの環境整備
- 施設のこと——どんな種類があるか、どう探せばいいか
- 家族側の事情——「働いているので日中は見られない」「遠方に住んでいる」といった条件の共有
どこに行けば会えるのか
所属する部署の名前は病院によってさまざまで、次のように呼ばれています。
地域医療連携室/医療福祉相談室/患者支援センター/入退院支援センター/相談支援室——など。
院内の案内図で「相談」「連携」「支援」といった言葉が入った部署を探すか、受付や病棟の看護師さんに「退院後のことを相談したいのですが、相談員の方はいらっしゃいますか」と聞けば案内してもらえます。
- 相談は基本的に無料です——費用を心配して遠慮する必要はありません
- 早い段階で相談していいのです——「退院の話が出てから」ではなく、入院してわりと早い時期から相談して構いません。近年の制度は、入院の早い段階から退院後の生活を見据えて支援する方向に整えられてきています
- まとまっていない話でいいのです——「何を聞けばいいのか分からない」という状態からの相談を受けるのが、この人たちの仕事です
相談するときに伝えると話が早いこと
相談員は、患者さんの体の状態は病棟から把握できますが、ご家族の側の事情は、家族が話さないと分かりません。ここが重要です。遠慮して事情を伏せてしまうと、実現が難しい前提で話が進んでしまうことがあります。
- 家族の住まいと距離——「片道2時間かかります」「同居ではありません」
- 仕事の状況——「平日の日中はまったく動けません」「休みは取りづらいです」
- 家の作り——「二階に寝室があります」「玄関に段差があります」「エレベーターのない集合住宅です」
- 家族の健康状態——「母も高齢で、支えるのは難しいです」
- お金の見通し——「年金の範囲でおさめたいです」「毎月これ以上は難しいです」
- 正直な気持ち——「自宅で見られる自信がありません」
最後の項目を口に出すのは、勇気がいることだと思います。ですが、「難しい」と伝えることは、投げ出すことではありません。実際に続けられない体制を作ってしまうほうが、結果的にご本人にとっても厳しい結果を招きます。相談員は、そういう話を日常的に聞いている人たちです。
④ 入院中に考え始める「退院後、どこで暮らすか」
治療が進んでくると、いずれ「このあとどうしますか」という話題が出てきます。ここで慌てないために、選択肢の全体像を先に見ておきましょう。
| 選択肢 | どんな形か | 考えどころ |
|---|---|---|
| 自宅にそのまま戻る | 入院前とほぼ同じ暮らしに戻る | 入院前と同じように動けるかどうかが分かれ目。入院で体力が落ちていることもあります |
| 自宅+介護サービス | 自宅に戻り、訪問介護・訪問看護・デイサービス・福祉用具などで支える | もっとも多く選ばれる形。介護保険の認定を受けておくと選択肢が広がります |
| 別の病棟・病院に移る(転院) | リハビリや、引き続き医療的な見守りが必要な場合に移る | 目的によって移る先が変わります。⑦でくわしく |
| 施設で暮らす | 介護付きの住まいに移る | 種類も費用も幅が広く、探すのに時間がかかります。早めの情報収集が効きます |
判断のもとになる、3つの視点
どれを選ぶかは、次の3つが噛み合うかどうかで決まってきます。どれか1つだけで決めようとすると、無理が出ます。
- 1. ご本人の状態——退院時点でどのくらい自分でできるのか。歩けるか、食べられるか、トイレはどうか、医療的な処置が続くのか。これは病院側から情報がもらえます
- 2. 住まいの環境——段差、階段、トイレやお風呂の作り、部屋の広さ。手すりの設置や福祉用具で解決できる部分もあります
- 3. 支える家族の状況——誰が、どのくらいの時間、関われるのか。仕事、距離、家族自身の健康。ここを実際より多めに見積もらないことが何より大切です
ご本人の希望を、できるうちに聞いておく
体調が落ち着いている時期に、「退院したらどう過ごしたい?」と一度聞いておけると、あとの判断がずいぶん楽になります。
「家に帰りたい」と言われて、それが難しそうなときは苦しいものです。ですが、聞かないまま家族だけで決めてしまうと、決めた側にも重いものが残ります。希望をそのまま叶えられなくても、聞いたという事実には意味があります。
ですが、判断の材料は希望だけではありません。安全に暮らせるか、支える側が続けられるかも、同じくらい大事な材料です。無理な体制を組んだ結果、家族が倒れてしまえば、ご本人の暮らしも支えられなくなります。
複数の選択肢を並べて検討すること自体が、ご本人のためを思っている証拠です。
⑤ 入院中に介護保険の申請ができます
意外と知られていないのですが、介護保険の要介護認定は、入院中でも申請できます。退院してからでないとダメ、ということはありません。
そもそも要介護認定とは
市区町村に申請して、「どのくらい介護が必要な状態か」を判定してもらう手続きのことです。ここで認定を受けると、介護保険のサービス(訪問介護、デイサービス、福祉用具のレンタル、施設の利用など)を、原則1〜3割の自己負担で使えるようになります(負担の割合は所得などによって異なります)。
逆に言えば、認定がないと、介護保険のサービスは使い始められません。ここが大事なところです。
なぜ「入院中に」なのか
理由はシンプルで、認定が出るまでに時間がかかるからです。
申請してすぐ結果が出るわけではありません。市区町村の調査員による聞き取り調査があり、主治医の意見書が用意され、審査会にかけられて、ようやく結果が通知されます。制度上は申請から一定期間内に通知することとされていますが、実際にはそれより時間がかかることも珍しくありません。
もし退院してから申請すると、認定が出るまでの間、介護サービスがない状態で自宅生活が始まってしまいます。この期間がいちばんしんどい、という声はよく聞かれます。だから、入院中から動く意味があるのです。
- 1. 申請する——親御さんがお住まいの市区町村の介護保険担当窓口、または地域包括支援センターへ。家族が代わりに申請できます
- 2. 認定調査——調査員が状態を確認しに来ます。入院中であれば、病院まで来てもらえるのが一般的です
- 3. 主治医意見書——市区町村から主治医に依頼が行きます。入院中なら病院の主治医が書くことになります
- 4. 審査・判定——専門家の審査会で判定されます
- 5. 結果の通知——「要支援1〜2」「要介護1〜5」または「非該当」の結果が届きます
いつ申請するのがよいのか
これは少し悩ましいところで、早ければいいというものでもありません。
というのも、認定調査は「そのときの状態」を見て行われます。手術の直後など、状態がまだ大きく動いている時期に調査を受けると、そのあとの回復によって実態と結果がずれてしまうことがあります。
そのため、退院のめどが見え始めたころを目安に申請するのがよいとされています。ただしこれは病状や回復の進み方によって変わりますので、「いつ申請するのがよさそうか」を医療ソーシャルワーカーに相談して決めるのがいちばん確実です。病院側は退院までのだいたいの見通しを持っていますし、認定調査の受け入れにも慣れています。
そこで、可能であれば調査に家族が同席することをおすすめします。「普段は手を貸さないとできません」「夜は違います」といった、日常の姿を補って伝えることができます。難しければ、日ごろ困っていることをメモにして事前に渡す方法もあります。
これは実態より重く見せるためではなく、普段の姿を正確に伝えるためです。
なお、入院中は医療保険で治療を受けているため、入院しながら介護保険のサービスを使うわけではありません。入院中に申請するのは、あくまで退院後にすぐ使えるようにしておくためです。ここは混乱しやすいので、頭を整理しておいてください。
⑥ 退院に向けた話し合い(退院前カンファレンス)
退院が近づいてくると、関係する人が集まって話し合いの場が持たれることがあります。退院前カンファレンス(退院時カンファレンス、退院前合同カンファレンスなどとも呼ばれます)です。
名前が仰々しいので身構えてしまうかもしれませんが、要するに「この人が家に帰ったあと、誰が何をするか」を関係者全員で確認する打ち合わせです。
誰が参加するのか
ケースによって顔ぶれは変わりますが、おおよそ次のような方々です。
| 立場 | 参加する人(例) |
|---|---|
| 病院側 | 主治医、病棟の看護師、リハビリの担当者(理学療法士・作業療法士・言語聴覚士など)、管理栄養士、薬剤師、医療ソーシャルワーカー |
| 退院後に支える側 | ケアマネジャー、訪問看護師、訪問診療の医師、訪問リハビリの担当者、福祉用具の事業者、ヘルパー事業所の担当者など |
| ご本人・ご家族 | 体調が許せばご本人も。ご家族はぜひ参加を |
どんなことが話されるのか
進め方は病院によって違いますが、大きな流れとしては次のような形が多いようです。
- 1. 医師から——治療の経過と、退院後に気をつけること
- 2. 看護師から——入院中の生活の様子、必要な処置や薬の管理
- 3. リハビリ担当から——どのくらい動けるか、どう介助するとよいか
- 4. 質疑応答——ご家族や、退院後に支える側から質問
- 5. 役割の確認——誰が、いつ、何をするのかを整理
家族は何を伝えればいいのか
専門職が並ぶ場なので、遠慮して黙ってしまう方が多いのですが、この場でいちばん貴重な情報を持っているのはご家族です。退院後の暮らしの現場を知っているのは家族だけだからです。
- 家の状況を具体的に——「トイレが二階です」「ベッドではなく布団で寝ています」「玄関に大きな段差があります」
- 家族が関われる時間の実際——「平日は誰もいません」「朝の対応は無理です」「週末しか行けません」
- できないと思うこと——「注射や処置は自信がありません」「夜中に起きるのは続けられません」
- 不安に思っていること——「また転ぶのが怖いです」「火を使わせていいのか分かりません」
- 疑問はその場で——「この薬は誰が管理するのですか」「具合が悪くなったらどこに連絡すればいいですか」
「それは難しいです」と言えば、代わりの手段を専門職が考えてくれます。訪問看護に頼む、サービスの回数を増やす、福祉用具を入れる——選択肢はあります。無理を申告することは、わがままではなく、計画を現実的なものにするための情報提供です。
準備しておくと安心なこと
短い時間で終わることも多いので、聞きたいことは紙にメモして持っていくのがおすすめです。その場では緊張して思い出せないものです。
また、家の中の写真——玄関、廊下、トイレ、お風呂、寝る場所——をスマートフォンで撮って持っていくと、話が一気に具体的になります。「この段差なら手すりを付けましょう」といった提案につながります。
なお、こうした話し合いの場が設けられないこともあります。その場合でも、医療ソーシャルワーカーに「退院前に関係者と話す機会は持てますか」と聞いてみる価値はあります。
⑦ 「転院」という選択肢——病棟の種類を知る
「まだ家に帰るのは不安だけれど、今の病院にはこれ以上いられないらしい」——この場面で戸惑う方はとても多いです。
ここで知っておきたいのは、病院の病棟には役割の違いがあるということです。急な病気やけがの治療をする病棟、リハビリに力を入れる病棟、長く療養する病棟——それぞれ目的が違い、制度上も別のものとして扱われています。
ですから、今の病棟を出ることは「行き場がなくなる」ことではなく、状態に合った次の場所へ移るという意味であることがほとんどです。
急な病気やけがに対応する病棟は、そのための人員と設備を集中させている場所です。治療が一段落した方には、リハビリに専念できる場所や、生活に戻る準備をする場所のほうが向いている——制度はそういう考え方で組み立てられています。
「次はどこが合いそうか」を一緒に考えてくれるのが、医療ソーシャルワーカーです。
主な病棟の種類
| 病棟の種類 | どんなところか | 主に対象になる方 |
|---|---|---|
| 一般病棟 (急性期) |
急な病気やけが、手術など、集中的な治療を行う病棟です。多くの方が最初に入院するのがここです | 治療そのものが必要な段階の方 |
| 回復期リハビリテーション病棟 | 治療が一段落したあと、リハビリに集中して取り組むための病棟です。自宅などへの復帰を目指します | 脳血管の病気や、骨折・手術のあとなど、対象となる状態が制度で定められています。誰でも入れるわけではありません |
| 地域包括ケア病棟 | 治療・看護・リハビリ・生活の調整をバランスよく行う病棟です。自宅や施設に戻る準備をする場としての役割があります | 急な治療を終えて経過を見たい方、在宅の療養中に一時的に状態が悪くなった方、退院に向けて調整が必要な方など |
| 療養病棟 (医療療養病床) |
状態が慢性的に落ち着いていて、継続的な医療的管理が必要な方が長めに療養する病棟です | 医療的な必要度が高い状態が続いている方 |
| 介護医療院 | 病棟ではなく介護保険の施設です。長期の療養と、生活の場としての機能をあわせ持ちます | 要介護の認定を受けていて、医療的な管理も必要な方 |
また、実際に何日いられるかは、病状や病院の方針によっても違います。ネットで見た日数を前提に計画を立てると、あとで食い違うことになりかねません。
「うちの場合はどのくらいの見通しですか」と、必ず入院先の相談員か主治医に直接確認してください。これがいちばん確実です。
転院を考えるときに聞いておきたいこと
- そもそも転院という選択肢があるか——状態によっては対象にならない病棟もあります
- 候補になる病院はどこか——通える距離かどうかは大事な要素です
- どのくらいの期間が見込まれるか——目安として
- 費用はどのくらいか——病棟の種類や部屋の条件によって変わります
- 面会や外出の決まり——家族が関わりやすいかどうかに直結します
- その先はどうなるか——転院先を出るときの選択肢も、あらかじめ聞いておくと慌てずに済みます
最後の項目は見落とされがちですが、大切です。転院は問題の先送りではなく、その間に次の準備を進めるための時間でもあります。転院したら安心して手を止めてしまうと、また同じ場面が来たときに慌てることになります。
⑧ 「まだ家では見られない」と感じたとき
選択肢を並べて考えていくうちに、「正直、自宅で見るのは難しいかもしれない」という気持ちが出てくることがあります。
そう感じること自体は、決して後ろめたいことではありません。むしろ、状況を冷静に見られているということだと思います。
その気持ちは、どこから来ているのか
「難しい」と感じる理由は、だいたい次のどれかに整理できます。書き出してみると、対処できる部分とできない部分が分かれてきます。
- 体力的に難しい——移乗や入浴の介助、夜間の対応。福祉用具やサービスで軽くできる部分もあります
- 時間的に難しい——仕事、距離、他の家族のこと。働き方の制度が使えることもあります
- 医療的に不安——処置や薬の管理。訪問看護で支えられる場合があります
- 住まいが合わない——階段、段差、部屋の配置。改修で解決できることもあれば、難しいこともあります
- 気持ちの面で続かない——ここは道具では解決しません。いちばん軽く見られがちで、いちばん深刻な要素です
分けてみて、「サービスを足せばなんとかなりそう」となることもあります。その場合は、まずケアマネジャーに相談しながら在宅の体制を組んでみる価値があります。在宅で使えるサービスについては一人暮らしの親に使える在宅介護サービスまとめもご覧ください。
一方で、いくつも重なっている場合や、気持ちの面で限界を感じている場合は、別の暮らし方を選択肢に入れて考えるほうが、結果としてみんなが穏やかでいられることがあります。判断の目安については在宅介護の限界サイン8つでも整理しています。
施設は「今すぐ決めるもの」ではありません
ここで大事なことをお伝えします。施設のことを調べ始めることと、施設に入ると決めることは、まったく別です。
施設には種類がいくつもあり、費用の幅も広く、地域によって空き状況もまったく違います。だからこそ、調べておくだけでも意味があります。「もし在宅が続かなくなったら、こういう選択肢がある」と分かっているだけで、目の前の判断がずいぶん落ち着いてできるようになります。
そして、もし退院までの時間が限られていると感じていても、焦って決める必要はありません。転院という選択肢もありますし、在宅で始めてみて、あとから見直すこともできます。介護は一度決めたら変えられないものではありません。
もちろん、病院の医療ソーシャルワーカーや、地域包括支援センターに相談することもできます。入り口はひとつではありません。聞きやすいところから始めてください。
⑨ お金の不安とどう向き合うか
口に出しにくいけれど、多くの方が抱えているのがお金の心配です。入院費に加えて、退院後の介護にもお金がかかるかもしれない——不安になるのは当然です。
ここでお伝えしたいのは、負担を軽くするための仕組みが用意されているということ、そしてそれは自分で申請しないと使えないことが多いということです。
医療費の負担を抑える仕組み
公的な医療保険には、1か月の医療費の自己負担が一定額を超えたとき、超えた分が払い戻される仕組みがあります。高額療養費制度と呼ばれるものです。
さらに、事前に手続きをしておくと、窓口での支払いそのものを一定額までに抑えられる方法もあります。あとから払い戻してもらうのではなく、最初から抑えられるので、手元のお金の負担が軽くなります。
ですから、この記事ではあえて金額を書きません。
「うちの場合はいくらになりますか」は、必ず加入している健康保険の窓口でご確認ください。お勤め先の健康保険組合、協会けんぽ、市区町村の国民健康保険や後期高齢者医療の窓口などです。病院の医療ソーシャルワーカーに聞けば、どこに問い合わせればよいかも教えてもらえます。
- 自己負担の上限はいくらになるのか——加入している健康保険の窓口へ
- 窓口での支払いを抑える手続きができるか——同じく健康保険の窓口へ。マイナ保険証を使う場合、対応している医療機関では手続きが不要になることもあります
- 入院中の食事代や部屋代の扱い——これらは高額療養費の対象にならない部分があります。病院の会計窓口で確認を
- 個室を使う場合の費用——別途かかることがあります。希望していない場合の扱いも含めて確認しておくと安心です
- 介護保険にも負担を抑える仕組みがあるか——市区町村の介護保険窓口や地域包括支援センターへ
- 医療と介護が両方かかる場合——合算して負担を抑える仕組みもあります。窓口で「両方かかっているのですが」と伝えてみてください
お金の話も、相談員にしていいのです
「お金のことを病院で話すのは気が引ける」と感じる方は少なくありません。ですが、医療ソーシャルワーカーの仕事には、まさにこの部分が含まれています。
「毎月これ以上の負担は難しいです」と正直に伝えることで、使える制度を教えてもらえたり、費用面で現実的な転院先や退院後の体制を一緒に考えてもらえたりします。予算という条件は、隠すよりも共有したほうが、良い選択につながります。
施設にかかる費用の全体像については、介護施設の費用はいくらかかる?もあわせてご覧ください。
⑩ 家族が抱え込まないために——相談先まとめ
入院から退院までの期間は、家族にとって決めることの多い時期です。しかも、慣れないことばかり。ひとりで抱えると必ずどこかで詰まります。
窓口ごとに得意分野が違いますので、整理しておきます。
| 相談先 | 何を相談できるか |
|---|---|
| 病院の医療ソーシャルワーカー (地域医療連携室・相談室など) |
入院中の相談の中心です。退院後どこで暮らすか、転院の選択肢、介護保険の申請の進め方、医療費の負担を軽くする制度、退院に向けた関係者との調整。相談は基本的に無料。まずここからで大丈夫です |
| 病棟の看護師 | 日々の様子、どのくらい動けるようになってきたか、家でのケアの具体的なやり方。「家でやるとしたらどうすればいいですか」と聞くと、実践的なことを教えてもらえます |
| 主治医 | 病状と治療、今後の見通し。時間が限られていることも多いので、聞きたいことをメモにして臨むのがおすすめです |
| 地域包括支援センター | 市区町村が設置している高齢者の相談窓口です。無料で、介護保険の申請、使えるサービス、施設のこと、お金のことまで幅広く相談できます。親御さんがお住まいの地域のセンターが担当になります。退院後の暮らしを支える地元の窓口として、早めにつながっておくと心強い存在です |
| ケアマネジャー | 要介護の認定を受けたあと、実際の介護サービスの計画を立ててくれる専門職です。すでに担当がいる場合は、入院したことを早めに伝えておきましょう |
| 市区町村の介護保険窓口 | 要介護認定の申請そのもの。介護保険の負担を軽くする仕組みについても、ここで確認できます |
| 加入している健康保険の窓口 | 医療費の自己負担の上限、窓口での支払いを抑える手続き。金額に関することはここが確実です |
| 勤務先の人事・総務 | 介護のために使える休みや働き方の制度。会社独自の制度があることもあります |
退院後の地元での暮らしについては、地域包括支援センターへ。まだ介護保険を使っていなくても、認定を受けていなくても相談できます。
相談窓口の全体像については、介護の相談はどこにすればいい?無料で使える相談窓口まとめでくわしく紹介しています。
家族自身のことも、どうか忘れずに
親の入院中、家族は仕事を調整し、病院に通い、書類を書き、きょうだいと連絡を取り——気づけば自分のことが後回しになっています。
ですが、この時期に無理をしすぎると、本番である退院後に力が残っていないということが起こります。介護はここから長く続くかもしれないのです。
面会に毎日行けなくても構いません。すべてを完璧に把握できなくても構いません。眠れているか、食べられているか——自分自身にも、ときどき目を向けてあげてください。介護する側の心の持ちようについては、介護する家族の心のケア|共倒れしないためにもご覧ください。
📌 まとめ
- 親の入院は突然でも、やることには順番があります。今日ぜんぶを決める必要はありません
- 入院直後は、保険証と薬の情報、そして家族の窓口を決めること。職場にも早めに一報を
- 病院には医療ソーシャルワーカー(相談員)がいます。暮らし・お金・手続きの相談ができ、相談は基本的に無料。「地域医療連携室」「医療福祉相談室」などの部署にいます
- 相談員には家族側の事情を正直に伝えてください。距離、仕事、家の作り、お金の見通し。伝えないと現実的でない計画になってしまいます
- 退院後の選択肢は自宅/自宅+介護サービス/転院/施設。ご本人の状態・住まい・家族の状況の3つで考えます
- 介護保険の要介護認定は入院中に申請できます。認定には時間がかかるため、退院してからでは間に合わないことも。申請の時期は相談員と決めるのが確実です
- 退院前カンファレンスでは、家族が家の状況と関われる時間を具体的に伝えること。「できます」と言いすぎないのが大切です
- 転院先の病棟には役割の違いがあります(回復期リハビリ病棟、地域包括ケア病棟、療養病棟など)。入院できる日数は制度改定で変わるため、必ず病院に直接確認を
- 「家では難しい」と感じることは、後ろめたいことではありません。調べることと決めることは別です
- 医療費には負担を抑える仕組みがあります。2026年8月から内容が変わる予定のため、金額は加入先の健康保険の窓口で確認を
- ひとりで抱えないこと。入院中は病院の相談員、地元のことは地域包括支援センターが入り口です
親の入院は、多くの家族にとって「これまでとは違う時期」の始まりです。分からないことばかりで、決めることも多く、心細く感じられるかもしれません。
ですが、この道を通ってきた家族はたくさんいますし、支えるための仕組みも、相談に乗ってくれる人も用意されています。ひとりで正解を出そうとしなくて大丈夫です。迷ったら、聞いてください。それがいちばんの近道です。
医療・介護の制度は改定によって変わります。2026年6月には診療報酬の改定が行われ、2026年8月には高額療養費制度の見直しが予定されているため、日数や金額に関する情報は特に変わりやすい部分です。この記事で具体的な数字を避けているのはそのためです。
実際に手続きを進めるときは、必ず入院先の医療ソーシャルワーカー・主治医、地域包括支援センター、市区町村の介護保険窓口、加入している健康保険の窓口など、専門の窓口で最新の内容をご確認ください。