施設の防災・災害対策|
地震や水害のとき、施設はどう動くか

サイト管理人
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祖父母の施設入居・父親の入院と緩和ケアを経験。実体験をもとに情報をお届けします。
見学のとき、居室の広さや食事、費用のことは熱心に聞くのに、「地震のときはどうするんですか」「浸水は大丈夫ですか」とはなかなか聞けない——そういう方は多いと思います。せっかくの見学の雰囲気を壊したくない、施設に失礼な気がする、そもそも何を聞けばいいか分からない。
でも、災害は「起きてから困る」ものです。起きる前に、どういう仕組みがあるのかを知っておくことには意味があります。
この記事は、これから施設を探す方、すでに入居している家族の方の両方に向けて書いています。地震・水害・停電のときに施設がどう動くとされているのか、家族として何を確認し、何を備えておけばいいのかを整理しました。
先に、この記事の姿勢をひとつだけ書いておきます。特定の施設について「安全」「危険」と判断することは、この記事ではしません。それができるのは、実際にその建物・立地・体制を確認した専門家だけです。ここでは、家族が自分で確認するための「見方」をお伝えすることに徹します。
⚠️ はじめにお読みください
この記事は、厚生労働省・内閣府・国土交通省などが公表している一般的な情報と、防災・介護分野で広く共有されている考え方(2026年8月時点)をもとにまとめたものです。

特定の施設の安全性について、この記事で判断することはいっさいできません。「この施設は大丈夫」「この施設は危険」といったことを、文章から読み取らないでください。建物の構造、立地、設備、職員体制は施設ごとにまったく異なります。

制度の内容は変わることがあります。業務継続計画(BCP)の策定義務化や非常災害対策計画に関する運営基準など、この記事で紹介する制度は、今後見直される可能性があります。具体的な内容・運用は、必ず施設や自治体、担当のケアマネジャーに確認してください。

この記事では、災害の被害を強調する書き方はしません。不安をあおることが目的ではなく、備えの実務に焦点を当てることを目指しています。

特定の家庭・施設の事例は、実在のものも、たとえ話として作ったものも、いっさい書いていません。

① なぜ「防災」は見学時に聞きにくいけれど大事なのか

施設見学に行くと、確認したいことがたくさんあります。居室の広さ、食事の内容、職員の人数、費用。時間は限られていて、防災の話まで手が回らないというのが、正直なところではないでしょうか。

また、「災害のことを聞くのは失礼ではないか」と感じてしまう方もいます。せっかく感じのいい施設で、雰囲気もよかったのに、「地震のときは大丈夫ですか」と聞くと、疑っているように受け取られないか——そう気にする方は少なくありません。

けれど、防災について質問することは、施設への不信ではありません。むしろ、しっかりした施設ほど、防災の取り組みについて具体的に答えられることが多いとされています。防災の質問に丁寧に答えてもらえるかどうかは、その施設が日頃どれだけ体制を整えているかを知る、ひとつの手がかりになります。

🌱 なぜ「入居してから」では遅いことがあるのか
  • 入居後に防災体制を変えることは難しい——建物の立地や構造は、入居してから変えられるものではありません
  • 災害はいつ起きるか分かりません——入居して間もない時期に発生することも、当然あり得ます
  • 「聞いておけばよかった」は、災害が起きてからでは取り返せません——見学の段階で聞いておくことに意味があります
だからといって、防災の確認だけで施設を決める必要はありません。費用や雰囲気、ケアの内容とあわせて、判断材料のひとつとして持っておく、というくらいの位置づけで十分です。

この記事では、②以降で施設側に義務づけられている取り組みと、家族として確認・準備できることを分けて整理していきます。難しい制度の名前も出てきますが、「そういう仕組みがある」ということだけ、まず知っていただければ十分です。

② 施設に義務づけられている防災の取り組み

介護施設には、防災に関していくつかの取り組みが、運営の基準として求められています。すべてを覚える必要はありませんが、「そういうものがある」と知っておくと、見学のときに質問しやすくなります。

🏢 大きく分けると、3つの取り組みがあります
  • 非常災害対策計画の策定——火災・地震などの非常災害に備えた対応計画
  • 避難、救出その他必要な訓練の実施——非常災害対策計画に基づく訓練(④で詳しく書きます)
  • 業務継続計画(BCP)の策定——災害や感染症が起きても、サービスをできる限り続けるための計画(2024年度から義務化)

非常災害対策計画とは

介護施設の運営に関する基準(厚生労働省令)では、火災、地震などの非常災害に関し、具体的な計画を立てることが、以前から求められてきました。この計画は、しばしば「非常災害対策計画」と呼ばれます。消防法にもとづく「消防計画」とあわせて、避難経路や通報の手順、職員の役割分担などが定められているのが一般的です。

業務継続計画(BCP)とは

ここ数年で新しく整えられてきたのが、業務継続計画(BCP:Business Continuity Plan)です。厚生労働省の説明などによれば、2021年度の介護報酬改定で、介護施設・事業所にBCPの策定が義務づけられ、一定の準備期間(経過措置)を経て、2024年度から義務化が進められてきたとされています。

非常災害対策計画とBCPは、目的が少し違います。おおまかな違いを表にまとめます。

非常災害対策計画 業務継続計画(BCP)
主な目的 災害発生時に、入居者の生命・安全を守ること(避難、通報、初動対応が中心)
もう一方の主な目的 災害や感染症が発生したあとも、介護サービスをできる限り止めずに続けること(早期の事業再開・継続が中心)
扱う時間軸 発災直後の初動が中心
もう一方の時間軸 発災直後から、復旧・事業継続までの中長期
内容の例 避難経路、避難訓練、通報体制、消火設備
もう一方の内容の例 優先業務の整理、必要な人員・物資の確保、他施設や自治体との連携、代替手段の検討
⚠️ 制度の詳細は、必ず施設にご確認ください
BCP策定の義務化の時期や経過措置の扱い、対象となる事業の範囲などは、複数回の制度改正を経てきており、この記事の記載だけで正確な現状を判断しないでください。

また、計画を策定していることと、実際にその通り機能することは、別の話です。計画があるかどうかだけでなく、「実際に訓練で使ったことがあるか」まで聞いてみると、より実態に近づけます。

最新の制度内容は、厚生労働省の公表資料や、施設・自治体への確認をお願いします。
💡 見学で聞いてみる例
  • 「非常災害対策計画は策定されていますか」
  • 「業務継続計画(BCP)は策定されていますか」
  • 「計画は、いつごろ、どんなきっかけで見直していますか」
言葉が難しく感じたら、「災害のときのマニュアルのようなものはありますか」という聞き方でも伝わります。

③ 建物・立地のハザードリスクの確認

施設の対応体制とあわせて、建物がどんな場所に建っているかも、家族が自分で確認できることのひとつです。ここは、施設に聞かなくても、家族側で調べられます。

ハザードマップとは

ハザードマップは、洪水・土砂災害・地震・津波などが起きた場合に、どのあたりでどの程度の被害が想定されるかを示した地図です。多くの市区町村が作成し、公表しています。国土交通省の「ハザードマップポータルサイト」では、全国の情報をまとめて確認できるようになっています。

🗺️ 確認しておきたい主なハザード
  • 洪水浸水想定区域——河川が氾濫した場合に、どのくらいの深さまで浸水する可能性があるかが示されます
  • 土砂災害警戒区域・土砂災害特別警戒区域——がけ崩れや土石流などのおそれがある区域として指定されています
  • 高潮浸水想定区域——海に近い地域で、台風などによる高潮の影響を示します
  • 津波浸水想定——沿岸部で、地震にともなう津波の想定が示されています
  • 地震の揺れやすさ、液状化の可能性——自治体によって公表状況は異なります

調べ方

施設の住所が分かれば、ハザードマップポータルサイトや、施設が所在する市区町村のウェブサイトで、その場所のリスクを調べることができます。紙の冊子として配布している自治体もあります。

✅ 調べるときの流れの一例
  • 施設の正式な住所を控える——パンフレットや公式サイトで確認できます
  • 市区町村のハザードマップ、または国土交通省のハザードマップポータルサイトで住所を検索する
  • 浸水想定区域・土砂災害警戒区域に該当するかを確認する——該当する場合は、想定される浸水の深さなども確認できます
  • 分からないことは、施設や自治体の窓口に聞いてみる——「この場所は、浸水想定区域に入っていますか」と直接尋ねても構いません
⚠️ ハザードマップで「安全」は判定できません
ここは、この記事で繰り返し強調したい点です。

ハザードマップは、「起こりうる被害を、あらかじめ知っておくための地図」であって、「この場所は安全」「この場所は危険」と白黒で判定するものではありません。想定区域に入っていないからといって、絶対に被害が出ないことを保証するものでもありません。

また、ハザードマップに載っている情報だけで、その施設の防災力を判断することもできません。浸水想定区域に立地していても、建物の構造や避難のしやすさ、垂直避難のしやすさなど、他の要素で対応できる場合があります。逆に、想定区域の外でも、周辺の状況によってリスクが変わることがあります。

この記事では、特定の施設について「ここは危険」「ここは安全」といった判断はしません。ハザードマップは、家族が状況を知り、施設に質問するための材料として使ってください。

建物や設備、周辺環境など、施設全体をどう見極めればよいかについては、良い施設・悪い施設の見分け方にもまとめています。防災の視点とあわせて読んでみてください。

④ 避難訓練はどのくらいの頻度で行われているか

非常災害対策計画に基づいて、介護施設では避難訓練の実施が求められています。一般的な傾向として言われている内容を紹介しますが、実際の頻度・内容は施設ごとに違うので、必ず個別に確認してください。

🚨 一般的に言われている頻度の目安
  • 入所系の施設では、年2回以上の訓練が目安として説明されることが多いです
  • 宿泊をともなう施設では、そのうち1回は夜間を想定した訓練——夜勤の職員が少ない時間帯を想定したものだと説明されます
  • 通所・訪問系のサービスでは、年1回以上が目安として説明されることがあります
繰り返しますが、これはあくまで一般的な目安です。施設の種類、規模、地域によって実際の運用は異なります。

訓練の内容として挙げられるもの

紹介されている訓練の内容には、避難誘導、初期消火、通報連絡、入居者の安否確認などが含まれることが多いとされます。車椅子の方や、寝たきりの方をどう安全に移動させるかといった、介護施設ならではの訓練内容が組み込まれていることもあります。

💡 見学・面会のときに聞いてみる例
  • 「避難訓練は、年にどのくらいの頻度で行っていますか」
  • 「夜間を想定した訓練は行っていますか」
  • 「訓練には、車椅子の方や寝たきりの方の避難も含まれますか」
  • 「最近の訓練で、うまくいかなかった点や見直した点はありますか」
最後の質問は、少し踏み込んだ内容ですが、率直に答えてもらえる施設ほど、日頃から訓練に真剣に取り組んでいる印象を受けることが多いようです。ただしこれも一般論であり、答え方だけで施設の良し悪しを断定することはできません。

⑤ 停電時の対応

災害時に起こりやすいことのひとつが停電です。とくに、医療機器を使っている入居者がいる場合、停電への備えは大きな意味を持ちます。

自家発電設備について

停電時の電源として、非常用自家発電設備を備えている施設があります。種類としては、ディーゼル式の発電機や、ポータブル型の発電機、無停電電源装置(UPS)などが使われているという調査結果が公表されています。

⚠️ すべての施設に自家発電設備があるとは限りません
自家発電設備の設置は、施設の種類や規模、建築時期によって状況が異なります。設置が推進されている一方で、すべての介護施設に義務づけられているわけではありません。

また、設置されていても、どの範囲の設備(照明、医療機器、エアコン、エレベーターなど)まで電気を供給できるかは、発電機の容量によって違います。「発電機がある」というだけで安心せず、「どこまでカバーできるのか」まで確認することが大切です。
🔌 医療機器を使っている入居者がいる場合
たんの吸引器、酸素濃縮器、人工呼吸器など、電気を必要とする医療機器を使っている方にとって、停電は命に関わる問題になり得ます。
  • その機器が、停電時にどう扱われるかを確認する——自家発電設備でカバーされるか、バッテリー内蔵か、業者との個別の対応があるか
  • バッテリーの持続時間を確認する——機器によって、数時間程度しかもたないこともあります
  • 医療機関・訪問看護との連携体制を確認する——長時間の停電が想定される場合、搬送や医療機関との連携が必要になることがあります
すでに入居中で、対象となる医療機器を使っているご家族がいる場合は、担当の看護職員やケアマネジャーに、個別に確認しておくことをおすすめします。

通信手段について

停電にともなって、固定電話やインターネット回線が使えなくなることがあります。施設によっては、携帯電話、衛星電話、無線機など、複数の通信手段を準備しているとされています。どのような手段が備えられているかは、施設ごとに異なるため、確認しておくとよい点のひとつです。

⑥ 備蓄について

災害発生後、行政からの支援物資がすぐに届くとは限りません。そのため、施設ではあらかじめ食料・水・介護用品などを備蓄しておくことが求められています。

備蓄日数の考え方

防災・BCPに関する一般的な解説では、「最低3日分」の備蓄が目安として紹介されることが多いです。行政からの支援が本格的に届くまで、それくらいの時間がかかることを想定した目安とされています。より長い期間(1週間程度)の備蓄を推奨する解説もあります。

📦 備蓄の対象として挙げられるもの
  • 飲料水——1人1日あたり数リットルが目安として紹介されることが多いです
  • 食料——アルファ化米、レトルト食品、缶詰など。介護施設では、きざみ食やとろみ食など、食べやすい形状のものへの配慮も必要とされます
  • 介護用品——おむつ、パッド、清拭用品など
  • 医薬品・衛生用品——常備薬、消毒液、マスクなど
  • 発電機の燃料——ディーゼル式などの場合、燃料の備蓄も必要になります
  • 簡易トイレ——断水時に必要になることがあります
⚠️ 「何をどれだけ備蓄しているか」は施設ごとに違います
備蓄の内容・量・管理方法は、施設の規模や方針によって異なります。この記事に書いた目安は、あくまで一般的な解説として紹介されているものであり、特定の施設がその通り備蓄していることを保証するものではありません。

気になる場合は、「食料や水は何日分くらい備蓄していますか」と、遠慮なく聞いてみてください。具体的な数字で答えてもらえるかどうかも、ひとつの目安になります。

⑦ 災害時の家族との連絡手段

災害が起きたとき、「本人が無事かどうか、すぐに知りたい」というのが、家族にとって一番の関心事だと思います。ここでは、施設側の安否確認の考え方と、家族側でも使える連絡手段を紹介します。

施設からの連絡について

多くの施設では、非常災害対策計画やBCPの中に、家族への連絡・安否確認の手順が定められています。ただし、大規模な災害が起きた直後は、電話がつながりにくくなる、施設側も対応に追われて連絡が遅れる、といったことが実際に起こり得ます。「すぐに連絡が来なかった」からといって、必ずしも異常事態とは限りません。

📞 家族側で知っておきたい連絡手段
  • 災害用伝言ダイヤル「171」——NTTが提供するサービスで、震度6弱以上の地震など、大きな災害が発生したときに利用できるようになります。施設の電話番号を使って伝言を録音・再生できます
  • 災害用伝言板(web171、各携帯電話会社のサービス)——インターネット経由で安否情報を登録・確認できるサービスです
  • SNSやメッセージアプリ——施設によっては、家族向けの連絡網としてメールやアプリを活用している場合があります
  • 施設の緊急連絡先を、控えておく——通常の代表電話とは別に、災害時用の連絡先が用意されている施設もあります
「171」の使い方は、実際に災害が起きてから初めて触るより、平時に一度試しておくほうが安心です。体験利用日が設けられていることがあります。
⚠️ すぐに連絡がつかなくても、まず落ち着いてください
大きな災害の直後は、施設も入居者の安全確保や避難対応に追われています。家族への連絡は、その後に行われることが一般的です。

何度も電話をかけ続けることは、施設の対応の妨げになることがあります。連絡手段(171や施設の緊急連絡先など)を確認したうえで、施設からの連絡を待つ、という判断も必要です。

⑧ 見学のときに確認しておきたい質問リスト

ここまでの内容を、見学のときにそのまま使える質問の形にまとめます。すべてを聞く必要はありません。気になるものだけ、いくつか選んで聞いてみてください。

✅ 防災に関する質問リスト
  • 非常災害対策計画や業務継続計画(BCP)は策定されていますか
  • この場所は、ハザードマップ上で浸水想定区域や土砂災害警戒区域に入っていますか
  • 避難訓練は、年にどのくらいの頻度で行っていますか。夜間の訓練はありますか
  • 停電時、非常用の自家発電設備はありますか。何をどこまでカバーできますか
  • 医療機器を使っている入居者への、停電時の対応はどうなっていますか
  • 食料・水・介護用品は、何日分くらい備蓄していますか
  • 災害時、家族への連絡はどのような方法で行われますか
  • 避難が必要になった場合、避難先はどこを想定していますか
  • 福祉避難所として指定されている、または連携している施設はありますか
  • 過去に、実際に避難や休業などの対応が必要になったことはありますか

見学のときに確認しておきたいその他のポイント(居室、費用、職員体制など)については、施設見学のチェックポイントにまとめています。防災の質問とあわせて、リストを作って見学に臨むと、聞き漏らしを防ぎやすくなります。

⚠️ 一度にすべて聞こうとしなくて大丈夫です
見学の時間は限られています。その場で全部を確認できなくても、後日、電話や資料請求で確認する方法もあります。

また、「答えがあいまいだった」からといって、その施設がすぐに問題だと判断する必要もありません。担当者がその場で答えられる範囲には限りがあり、後日確認して回答してもらえることもあります。回答を後日もらえるかどうか、その対応の丁寧さも、ひとつの判断材料になります。

⑨ 避難が必要になったときの実際の流れ

実際に避難が必要になったとき、施設ではどのような流れが想定されているのか、一般的に説明されている考え方を紹介します。

垂直避難と水平避難

避難の方法には、大きく分けて「垂直避難」と「水平避難」という考え方があります。

垂直避難 水平避難
内容 建物の中で、より高い階(上の階)へ移動すること
もう一方の内容 建物の外へ、安全な場所まで水平に移動すること
主に想定される場面 浸水のおそれがあるが、建物自体が頑丈で、外への移動時間が確保しにくい場合など
もう一方の想定場面 建物の倒壊や火災のおそれがある場合、移動できる時間的余裕がある場合など

どちらを選ぶかは、災害の種類、建物の構造、入居者の状態、時間的な余裕など、多くの要素で判断されるものとされています。「必ずこちら」という単純な決まりではありません。施設ごとに、非常災害対策計画の中で、どのような状況でどちらを選ぶかが想定されていることが一般的です。

福祉避難所という仕組み

施設の建物自体で対応しきれない場合や、より長期の避難生活が必要になった場合に関わってくるのが「福祉避難所」という仕組みです。

指定避難所(一般的な避難所) 福祉避難所
主な対象 災害で自宅にいられなくなった、すべての住民
もう一方の主な対象 高齢者、障害のある方など、特に配慮を必要とする方(要配慮者)
開設のタイミング 災害発生後、比較的早い段階で開設されることが多いです
もう一方の開設タイミング 内閣府のガイドラインでは、指定避難所での生活が難しいと判断された方のための「二次的な避難所」として位置づけられており、市区町村の要請に基づいて開設されるとされています
直接避難できるか できます
もう一方の直接避難の可否 内閣府のガイドラインでは、原則として、災害時にいきなり直接避難する場所ではないとされています。まず指定避難所等に避難したうえで、必要と判断された場合に案内される、という流れが基本とされています
⚠️ 福祉避難所の運用は、自治体によって大きく異なります
福祉避難所の指定状況、対象者の範囲、開設の判断基準、直接避難が可能かどうかの扱いは、市区町村によってかなり違います。近年の制度見直しにより、あらかじめ特定の福祉避難所を指定し、対象者が直接避難できるようにする「指定福祉避難所」の仕組みを整えている自治体もあります。

入居している施設や、家族が住んでいる地域の福祉避難所について、詳しくは市区町村の防災担当窓口、または地域包括支援センターにご確認ください。
🏢 入居している施設自体が福祉避難所になることもあります
介護施設の中には、市区町村と協定を結び、福祉避難所としての役割を担っている施設もあります。その場合、施設の入居者だけでなく、地域の要配慮者を一時的に受け入れる可能性がある、ということです。

この点も、施設に確認しておくとよいポイントのひとつです。「この施設は、福祉避難所として指定されていますか」と聞いてみることができます。

⑩ 家族側で備えておきたいこと

ここまで、施設側の取り組みを中心に見てきました。ここからは、家族としてできる備えを整理します。

👪 家族側でできる備え
  • 施設の緊急連絡先を、複数の方法で控えておく——代表電話だけでなく、災害時用の連絡先があれば、そちらも控えておきます
  • 災害用伝言ダイヤル「171」の使い方を、家族で共有しておく——実際に使う練習ができる体験日が定期的に設けられています
  • 本人の持病・薬の情報を、家族間で共有しておく——お薬手帳の写真をスマートフォンに保存しておく、家族全員が分かる場所に控えておくなど。災害時、施設や医療機関からの問い合わせにすぐ答えられるようにしておくと役立ちます
  • 緊急連絡先を、施設に複数登録しておく——連絡がつく家族が一人だけだと、その人と連絡がつかない場合に困ります
  • 本人の状態(歩けるか、車椅子か、認知症の程度など)を、施設と共有しておく——避難の際にどのような配慮が必要か、日頃から伝えておくと安心です
  • 家族自身の安全も、まず確保する——駆けつけようとして、かえって危険な状況に身を置かないようにしてください
⚠️ 「すぐに駆けつける」ことが、最善とは限りません
災害直後、心配のあまり、すぐに施設へ向かおうとする方がいます。気持ちはよく分かりますが、道路状況が悪化していたり、二次災害の危険があったりする場合、無理に移動することはかえって危険です。

まずは施設からの情報や、171などの連絡手段を確認し、状況を把握してから行動することをおすすめします。施設側も、混乱の中で多くの家族が一斉に駆けつけると、対応が難しくなることがあります。

災害時に限らず、施設での対応に疑問や不安を感じたときの伝え方については、施設への苦情の申し立て方にまとめています。防災体制について「聞いたけれど、納得できる説明がなかった」というときの参考にもなります。

⑪ 平時にできること

災害への備えは、災害が起きていない「平時」にどれだけ関係を作っておけるかにかかっている部分があります。

🌿 施設との関係づくり
  • 面会のたびに、少しずつ職員と顔見知りになっておく——普段からのやり取りが、いざというときの連絡のしやすさにつながります
  • 防災訓練の見学・参加が可能か、聞いてみる——施設によっては、家族の参加を受け入れている場合があります
  • 施設だよりや掲示板などで、防災に関する情報が発信されていないか、目を通す習慣をつける
🌿 家族間の役割分担
  • 災害時に誰が施設と連絡を取るか、あらかじめ家族の中で決めておく——一人に集中しすぎないようにします
  • 遠方に住む家族がいる場合、その人が情報の中継役を担うという方法もあります——被災地から離れた場所のほうが、電話がつながりやすいことがあります
  • きょうだいがいる場合は、この機会に連絡手段や役割分担を確認しておく

地域の防災の仕組み(避難所の場所、福祉避難所の指定状況、見守りネットワークなど)について分からないことがあれば、介護の相談はどこにすればいい?無料で使える相談窓口まとめにある地域包括支援センターなどの窓口に、遠慮なく相談してみてください。

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📌 まとめ

  • 防災について見学時に聞くのは、失礼なことではありません。むしろ、丁寧に答えてもらえるかどうかが、施設の日頃の体制を知る手がかりになります
  • 介護施設には、非常災害対策計画の策定、避難訓練の実施、業務継続計画(BCP)の策定が求められています。BCPは2021年度の介護報酬改定で義務化が決まり、経過措置を経て2024年度から義務化が進められてきたとされていますが、詳細は変わりうるので施設に確認してください
  • 建物・立地のハザードリスクは、国土交通省のハザードマップポータルサイトや市区町村のハザードマップで、家族側でも確認できます。ただし、ハザードマップだけで「安全」「危険」を判定することはできません
  • 避難訓練は、入所系施設で年2回以上、うち1回は夜間想定が目安として説明されることが多いですが、実際の頻度は施設ごとに違うので確認を
  • 停電時は、自家発電設備の有無と、その範囲(何をどこまでカバーできるか)の確認が重要です。医療機器を使っている入居者がいる場合は、個別に対応を確認してください
  • 食料・水・介護用品の備蓄は「最低3日分」が目安として紹介されることが多いですが、施設ごとに実際の内容・量は異なります
  • 家族との連絡手段として、災害用伝言ダイヤル「171」などがあります。大きな災害直後は連絡が遅れることもあり、まず落ち着いて情報を待つことも必要です
  • 見学時の質問リストとして、非常災害対策計画・BCPの有無、ハザードマップの状況、避難訓練の頻度、停電時の対応、備蓄日数、家族への連絡方法、避難先、福祉避難所との関係などが挙げられます
  • 避難には「垂直避難」と「水平避難」があり、状況によって使い分けられるとされています。福祉避難所は、多くの地域で「原則として二次的な避難所」と位置づけられていますが、運用は自治体によって大きく異なります
  • 家族側の備えとして、緊急連絡先の複数登録、持病・薬の情報共有、171の使い方の確認などが挙げられます。災害直後に無理に駆けつけようとしないことも大切です
  • 平時からの施設との関係づくり、家族間の役割分担が、いざというときの落ち着いた対応につながります

防災の話は、どうしても「まだ起きていないこと」への備えなので、後回しにされがちです。費用や生活の質にくらべると、後回しにしても実害がすぐには見えない、という事情もあると思います。

それでも、知っておくことと、知らないままでいることの差は、いざというときに大きく出ます。この記事で紹介した質問リストは、すべてを聞く必要はありません。気になるものをひとつ、ふたつ、見学や面会のときに聞いてみるだけでも、十分に意味があります。

そして最後にもう一度書いておきます。この記事は、特定の施設の安全性を判定するためのものではありません。建物の構造や立地、体制は施設ごとに異なり、それを正確に評価できるのは専門家だけです。この記事が、家族の皆さんが自分の目で確認し、施設に質問するための、ひとつの手がかりになればと思います。

⚠️ この記事について
この記事は、厚生労働省・内閣府・国土交通省・総務省などが公表している一般的な情報と、防災・介護の分野で広く共有されている考え方(2026年8月時点)をもとにまとめたものです。特定の施設・家庭の事例は、実在のものも、たとえ話として作ったものも記載していません。
この記事では、特定の施設の安全性についての判断はいっさいしていません。「この施設は安全です」「この施設は危険です」といった判断は、この記事からは読み取れません。建物・立地・体制の実際の評価は、専門家や施設・自治体への確認によってのみ行えます。
制度(業務継続計画の義務化、非常災害対策計画に関する運営基準、福祉避難所の運用など)の内容は、今後見直される可能性があります。最新かつ正確な内容は、厚生労働省・内閣府等の公表資料、または施設・自治体・担当のケアマネジャーに直接ご確認ください。
各章で紹介した目安・工夫は、「一般的に説明されている内容」であり、確実な基準や保証ではありません。実際の運用は、施設・地域によって大きく異なります。
📚 この記事で参考にした情報
  • 厚生労働省による、介護保険施設・事業所の運営基準(省令)に関する公表資料——非常災害対策計画の策定、避難・救出等の訓練の実施が求められていることについて
  • 厚生労働省による、介護分野における業務継続計画(BCP)策定の義務化に関する公表資料——2021年度介護報酬改定でBCP策定が義務づけられ、経過措置を経て義務化が進められてきた経緯について。具体的な時期・対象・現在の運用は変更されうるため、最新情報は厚生労働省の公表資料でご確認ください
  • 国土交通省「ハザードマップポータルサイト」および関連の公表資料——洪水浸水想定区域、土砂災害警戒区域等の指定制度、ハザードマップの作成・公表の仕組みについて
  • 内閣府(防災担当)「福祉避難所の確保・運営ガイドライン」——福祉避難所の位置づけ、指定避難所との違い、原則として二次的な避難所であること、要配慮者を対象とすることについて。近年、指定福祉避難所制度など運用の見直しが行われており、詳細は市区町村にご確認ください
  • 総務省・NTTによる、災害用伝言ダイヤル(171)に関する公表情報——提供開始の条件(震度6弱以上の地震発生時など)、使い方、伝言の保存期間について
  • 東京都福祉局など自治体による、高齢者施設等の非常用自家発電設備の整備に関する公表資料——自家発電設備の種類、整備の推進状況について。設置の有無・容量は施設によって異なります
  • 介護・防災分野での、BCP・防災対策における備蓄の考え方に関する一般的な解説——食料・水の備蓄日数の目安(最低3日分)、備蓄品目の例について。施設ごとの実際の備蓄内容を示すものではありません
制度の内容は要約してお伝えしています。正確な内容は各機関が公表する原文を、実際の運用や個別の施設の対応状況は、施設・自治体・担当のケアマネジャーに直接ご確認ください。この記事の内容をもって、特定の施設の安全性を判断しないでください。

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